「飲食店の路上利用緩和」ができない街の末路 単なる飲食店救助策と捉えると見誤る

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静岡県浜松市も6月19日から7月3日に「まちなかオープンテラス」と題した社会実験を行うと公表しており、福島県、三重県、熊本県熊本市や茨城県つくば市などがホームページで道路利用を呼びかけている。東京都は都道に加え、臨港道路、都立海上公園の規制も11月末まで緩和するとしている。

一方、事業者が問い合わせても反応のない自治体もあり、役所で現場が張り切っても、上司からはほかの自治体の様子を見てから、と冷たく言われたという話も聞く。商店街の中で意識の濃淡がある場合もある。

自治体と民間団体が団結しなければできない

その違いの背景には大きく2つの問題がある。1つは行政やまちづくり団体などといった実行に関わる人たちの問題、そしてもう1つは実際に道路が活用できる状態にあるかどうか、だ。

今回の緩和措置は個店が申請して利用できるものではなく、道路管理者である自治体が緊急措置を導入し、それに参加する占有主体としてのまちづくり団体や商店街などといった民間団体があって可能になる。自治体にその気がなければできないし、空間を上手にコントロールする主体も必要。加えて双方が連携しなければならない。前述の佐賀県や沼津市のように過去の実践も必要である。

例えば、滋賀県大津市では通知が出た当日に、市役所の担当者が自転車でまちを回って個店に参加を呼びかけ、7月1日からの実施が決まっている。迅速に動けたのは2015年以来の公共空間を使う社会実験の経験があったからだ。

「2015年11月の大津駅前中央大通りオープンモール以降、昨年には歩道を使ってテラス席を設けたことも。道路以外でも琵琶湖湖岸で野外シネマ、ビワコサップヨガなどさまざまな社会実験を試みており、それらを通じて生まれた多くの関係が新型コロナウイルス感染症対策として短期での開催決定につながりました」と都市計画部の加藤高明氏は話す。

警察との協議が楽になったとはいえ、商店街、個店とのやりとりに始まり、駅周辺が含まれることから鉄道事業者、役所内部でも保健所、商工担当、観光担当その他と関わる部署は多く、それまでの連携がなければ短期間で複数の関係者をまとめるのは至難の業。この作業ができるかどうか、まちの力が試されるのである。

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