スタバも!広告主「フェイスブック離れ」の原因 少なくとも430社が1カ月間広告出稿を停止

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こうした中、フェイスブックは6月末に過激派の反政府運動ブーガルーに関連した200アカウントを禁止したものの、ほかのSNSの動きの前ではトランプに対する腰折れた姿がなお一層際立つのだ。

さて、広告ボイコットを受けて、ザッカーバーグCEOは6月26日に社員とのミーティングでいくつかの方針を示したのだが、それもまた不信を増すものになっている。

内容は、ヘイト的な発言や表現が使われた広告は禁止すること、11月の大統領選挙に向け投票に関する投稿や投票を妨害するような内容にはラベルをつけることなどだが、加えてフェイスブックのルールに違反する内容でも重要な政治的人物による投稿は、「報道価値あり」とラベルをつけてサイトに残す、というのだ。ヘイトへの対処が限られている上、ヘイト的行動を刺激するようなトランプの投稿はそのままにされるということである。

広告主は800万社もある

NAACPはこれに対して声明を発表。「ヘイトへの無策に対する抗議にフェイスブックは音痴な返答しか返さず、NAACPは憂慮している。フェイスブックは言論の自由を支持すると言うが、これはヘイト・スピーチがはびこるのを許しているに過ぎない」とし、ヘイトに対する方針が単に広告に適用されるだけで、多数のユーザーグループや投稿に言及していないと批判した。

フェイスブックの担当者が大手広告主との折衝にギリギリまで臨んだり、ザッカーバーグCEOが近く広告主との話し合いに応じるとしており、ここ数日は広告主からのプレッシャーを意識した動きは見られる。だが、今後本当の意味でフェイスブックが断固とした姿勢を表明するかどうかは、まったく不明だ。

しかも、いくら大手広告主がボイコットしても、広告収入には大きく響かないという見方もある。フェイスブックの広告主総数は、何と800万社以上に上る。それと比べると、ボイコットに参加した430社は取るに足らない数だ。しかも、広告トラッキングを手がけるパスマティックスによると、トップ広告主100社の出稿による収入は全広告収入の6%にとどまり、70%以上の広告収入は小規模なビジネスによるものという。イメージとしてはダメージがあっても、フェイスブックの懐は痛まない、というのが現実のところなのだ。

広告主の中には、ボイコットを1カ月と定めず、フェイスブックの対応次第で再開するというところもあれば、11月の大統領選挙後まで出稿を停止すると発表したところもある。コロナ禍、フロイド事件、大統領選挙と、アメリカは今社会的に非常に不安定な環境にある。だからこそ、確固とした対処を望みたいところだが、空振りに終わるのかもしれない。

瀧口 範子 ジャーナリスト

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たきぐち のりこ / Noriko Takiguchi

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家:伊東豊雄・観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち:認知科学からのアプローチ』(テリー・ウィノグラード編著)、『独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書』(ジーン・シャープ著)などがある。

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