中国の新興カフェチェーン、瑞幸咖啡(ラッキン・コーヒー)の不正会計事件が思わぬ急展開を見せている。
ラッキンはADS(アメリカ預託株式)を上場するアメリカのナスダックから上場廃止を通告されたが、それを不服として聴聞会の開催を申し立て、上場廃止を引き延ばす構えだった。ところが6月26日夜、同社は聴聞会の申し立てを取り下げたと唐突に発表したのだ(訳注:直前までの経緯は『中国・新興カフェ粉飾に2回目の「上場廃止通告」』を参照)。
これでラッキンの上場廃止は決定的になった。と同時に、創業トップで董事長(会長に相当)を務める陸正耀氏と、その他の取締役会メンバーとの深刻な確執が露呈した。聴聞会の取り下げの発表から数時間後、ラッキンは同社の取締役会が陸氏に辞任を求め、それを審議するための会議を7月2日に開くと追加で明らかにしたのである。
陸氏への辞任要求は、社内調査を主導する特別委員会が、調査過程で発見した証拠資料や陸氏が調査に協力しなかったことなどに基づいて提案した。多数の取締役がこれを支持しているという。
金融機関が創業トップらの破産申し立て
背景で何があったのか。注目すべきなのは、ラッキンが7月5日に臨時株主総会の開催を予定していることだ。この総会には陸氏の取締役退任とともに、特別委員会の委員長を務める邵孝恒氏を含む3人の取締役の退任が提案されている。臨時総会を提起したのは支配株主の陸氏だ。
ラッキンの開示資料によれば、陸氏は親族や側近の前CEO(最高経営責任者)らとともに、個人企業を通じて発行済株式の49%、議決権の76%を握っている。だが持ち株を担保に資金を借り入れていたため、不正会計が発覚した後、クレディ・スイスなどの金融機関が陸氏らの個人企業の破産を英領バージン諸島とケイマン諸島の裁判所に申し立てた。実は、その初回審理が臨時株主総会の翌日の7月6日に開廷する予定なのである。
仮に金融機関の申し立てを裁判所が認めれば、陸氏はラッキンの支配株主の地位を失う。「陸氏が7月5日の臨時株主総会を提起したのは、自らの退任と引き替えに対立する取締役を一掃し、会社の実質支配を続けるためだ」。特別委員会に近いある関係者は、財新記者にそう語った。
つまり冒頭の6月26日の動きは、ラッキンの上場と自らの影響力を維持しようとする陸氏の画策に対し、取締役会がとった反撃といえる。取締役会は一般株主に向けて、臨時株主総会で特別委員会委員長の邵氏の退任に反対票を投じるよう呼びかけている。
(財新記者:沈欣悦)
※原文の配信は6月27日
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