地方創生は難しいと思う人に知ってほしい知識 各種テクノロジーが都市部との差を埋めていく

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また、イチゴ採取は過酷な労働としても知られている。広大なイチゴ畑の中で、地面近くまでしゃがみ、熟して赤くなった実だけを採取する作業を毎日繰り返すので、腰痛などの健康被害を訴える人も多いと聞く。

そうした重労働を代替してくれるのが、同社のロボット「ベリー5」である。フロリダ州ウィッシュファームで行われた実証実験で、このロボットは人間同様、センサーによって熟した赤い実だけを識別し、潰すことなくそっと採取する。しかも、まだ成熟していない実や、葉や花を傷つけることなく採取できる。

ハーベスト・CROO・ロボティクスのウェブサイトによると、このロボットを活用することで1日に8エーカー分の畑での収穫が可能で、人間にして30人分ほどの作業を代替できる。また、人間とは異なりロボットは1日20時間以上の稼働が可能で、暑くてイチゴが傷つきやすい日中を避け、早朝などの時間帯に収穫作業を行える。

イチゴ収穫ロボットはアメリカでの事例だが、日本でもAIと農業を組み合わせる取り組みが始まっている。

移住の相談相手はAI?

地方自治体の中にも、地方創生にAIを活用する実例が出始めている。自治体のAI活用で比較的ハードルの低いものの1つとしては、AIチャットボットの導入がある。

チャットボットといっても、自治体職員向け、地元企業向け、市民サービス向けなどさまざまな用途が考えられるが、一例として、キャメルの提供するサービスと導入事例を見てみよう。同社は、移住・定住者の不安や疑問を解決するためのAIチャットボットの「移住・定住Edia(エディア)」を提供している。

このチャットボットは、忙しい自治体職員に代わって24時間365日問い合わせに対応する。英語や中国語、韓国語など日本語以外にも対応しており、外国人からの移住相談にも応えることができる。また、問い合わせ内容のログを貯めて人々のニーズがどこにあるのかを分析し、より最適なコミュニケーションを設計することができる。

このソリューションを実際に導入しているのが、岡山県和気町である。JR岡山駅から電車で30分の場所で、人口1万5000人弱、5000世帯超が暮らしている小さな町だ。和気町では、このEdiaを活用して、「わけまろくん」というAIチャットボットを開発し、運用している。和気町のホームページかLINEから、誰でもわけまろくんとチャットできるので、興味のある方は検索してみてほしい。

筆者がウェブサイト上から、わけまろくんの部屋を訪問してみると、「和気町のことで知りたいことがあれば何でも聞いて下さい!」というセリフとともに、

1 和気町について
2 わけまろくんについて
3 移住定住について

という3つの質問カテゴリーが表示された。訪問者はこのカテゴリーをたどって聞きたい問いに対する答えを得ることもできるし、AIならではの自然言語処理機能と対話機能によって、質問を直接テキストベースで入力して会話することもできる。試しに、「移住に関するパンフレットが欲しい」と入力してみた。

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