地方創生は難しいと思う人に知ってほしい知識 各種テクノロジーが都市部との差を埋めていく

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テクノロジー活用は、エンターテインメントのみならず、教育でも大きな期待がかかる。

というのも、大学進学のタイミングで地方から大都市に引っ越す人は多いからだ。文部科学省「学校基本統計」によると、大学進学者の約半数が他県に進学しており、2017年度の調査では、全47都道府県のうち37都道府県で流出超過の状況にある。

流入超過となっているのは、東京都、京都府、大阪府、神奈川県など、有名大学のある大都市圏を中心とした10都府県のみだ。

しかし、仮に、特定の場所にとらわれずに教育を受けられる環境が実現できたとしたらどうだろうか。しかも、最低限必要とされるレベルでの教育ではなく、むしろオンライン授業ならではの利点を生かし、生徒それぞれの学習状況に寄り添い、生徒の自発性を引き出すような一流の教育が受けられるとしたら。

実は、すでに国内外において、リモートでありながら一流の教育を提供しようという取り組みが始まっている。

例えば、アメリカで2014年9月に設立されたミネルヴァ大学の例を見てみよう。ミネルヴァ大学は「高等教育の再創造」を掲げて創立された4年制の総合私立大学である。同大学は、特定のキャンパスを持っていない。従来の座学授業による知識詰め込み型教育ではなく、講義はすべてオンライン形式のアクティブラーニングによって実施されている。

学生は4年間で、サンフランシスコ、ソウル、ハイデラバード、ベルリン、ブエノスアイレス、ロンドンの7都市に移り住む。オンライン講義と合わせて各国の現場課題を検討することで、より深い学びを得られるのだ。

リモートで超一流の大学教育を提供

オンライン形式ならではのデータ活用によって、教育の質を上げる取り組みも行われている。講師の手元にあるモニターには、生徒個人の表情や作業状況が映し出されており、これによって、やる気や理解度を把握する。生徒の発言時間も自動的に計測され、グラフ化されるため、発言量のバランスを見ながら授業を進行することもできる。

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ミネルヴァ大学の授業料は年間1万ドルほど。マサチューセッツ工科大学やハーバード大学、スタンフォード大学など、アメリカの有名大学と比べると3分の1程度である。学費を下げながら、Thinking Critically(批判的に考える)、Thinking Creatively(創造豊かに考える)、Communicating Effectively(円滑なコミュニケーション)という3つのコアスキルをバランスよく使いこなす人材の育成に尽力しており、世界の名門大学の合格を辞退して、進学する学生がいることでも注目されている。毎年世界中から2万人以上が受験するが、合格率はわずか2%未満だ。

これまで、エンターテインメントに関して都市部と地方部の間には大きな格差があったが、今後、良質な教育・娯楽コンテンツがリモートで提供されるようになれば、コンテンツの内容・質において都市部と地方部の差は縮まっていくと考えられる。デジタルによって、都市部と地方部の間には格差が縮まり、前回述べたように生活コストが安い分、移住や2拠点生活が現実味を帯びてくるようになるだろう。

江川 昌史 アクセンチュア社長

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えがわ あつし / Atsushi Egawa

1989年慶應義塾大学商学部を卒業。同年アクセンチュアに入社。製造・流通業界を中心に、通信、ハイテク、素材・エネルギー、公共サービス領域など、多岐にわたるお客様のプロジェクトを指揮。主に、戦略立案、構造改革、新規事業立ち上げ、デジタル変革、大規模アウトソーシングプロジェクトなどの案件を主導した。2000年にパートナーに就任。消費財業界向け事業の日本統括を歴任し、2008年10月に執行役員 製造・流通本部 統括本部長に就任。2014年12月に取締役副社長就任、2015年9月より現職。経済同友会幹事。

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