夫を「主人」と呼ぶ人に感じるモヤモヤ感の真因 経済力がある、若い女性までなぜ使うのか

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では、夫婦の間で、「主人」と呼ぶことが定着したのは、いつなのだろうか。そのヒントが、1917(大正6)年の『主婦之友』(1954年1月号から『主婦の友』)創刊号にあった。「何といつて良人を呼ぶか」というアンケートに対し、セレブの妻たちが回答を寄せている。文学博士の妻は、家庭内で夫を呼ぶときは「アナタ」、他人に対しては「主人」と呼ぶ。学校教頭の妻は、他人に対して「宅の主人」と呼ぶ。夫の名字を呼び捨てで言う人もいる。

大正時代、上流階級では、他人に夫の話をする際、「主人」と呼ぶことは広まっていた。しかし、わざわざ雑誌で取り上げた、ということは、まだ一般化された呼び方ではなかったのではないか。

『主婦之友』は、サラリーマンなど雇用者の妻が増え始めた時代を背景に生まれた雑誌である。1894年に起こった日清戦争あたりから日本でも産業革命が起こり、上流階級と庶民の間に、中流層ができて拡大したことが背景にある。

財産はないが、家族を養える安定収入を持つ人たちの層は、それまでの日本にはなかった。仕事は持たないが、大勢の使用人に家事を任せられるほどではない中流生活を送る女性たちが、この雑誌の誕生によって、自分を「主婦」だと自覚し、この言葉が広まった。

日本に主婦という言葉が入ってきたのは、明治半ばである。最初は、使用人たちを采配する家の奥様を指す言葉だったが、『主婦之友』によって、サラリーマンの奥さんたちを指すものに変わっていく。今は主婦と言えば、専業主婦を指すイメージが強い。

『主婦之友』は、新しい立場を得たばかりの女性たちに、主婦業の指南をする側面もあってどんどん売れていった。そういう雑誌が創刊号で、夫の呼び方は「主人」だと教えた意味は大きい。おそらく、この雑誌がきっかけで、中流層の妻たちは、自分が主婦で夫は主人なのだ、と考えるようになったのではないだろうか。

昭和時代は、主婦全盛期である。その頃は、妻たちが夫を「主人」と連発していた。しかし、1990年代に既婚女性の多数派を共働き女性が占めるようになっていくと、夫を「主人」と呼ぶ人は減っていく。

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