左派復活のためには新しい思想が必要だ--イアン・ブルマ 米バード大学教授/ジャーナリスト

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 革命的な情熱は左派からネオコンに引き継がれた。リベラル派はネオコンに警戒心を抱いたが、彼らに対抗するために必要な一貫性のある解答を見つけ出せなかった。国際主義に対する情熱を失ったリベラル派は、ネオコンの過激主義に対して「現実主義」と「他国への不介入」と「世界からの撤退」を主張することしかできなかった。

それは賢明な道であったかもしれないが、人々を奮い立たせるものではなかった。その意味で、クシュネル仏外相のような左派の国際主義者が、保守的なサルコジ政権の中に自分の理想を見いだしたとしても驚きではない。

アメリカでは、ケネディ政権以降初めて中道左派政権が誕生した。オバマ大統領は、理想主義の新しい時代を切り開くことができるのだろうか。そうは思えない。たとえば医療保険制度改革は、欧州や日本で長い間当然と考えられてきた制度に追いつく試みであって、とても革新的と言えるものではない。

オバマ大統領は政敵から“社会主義者”と批判されている。彼は社会主義者ではないし、単に利害の調整を図る行政者でもない。理想を持った有能な大統領になれるかもしれない。しかし、リベラルな理想主義を復活させるためには、正義と平等と自由を世界に普及させるための新しい思想が必要である。

レーガン、サッチャー、ゴルバチョフの3氏は希望を示し、イデオロギーの時代の幕引きを助けた。だがその結果、人種的な大量殺戮を招いてしまった。私たちは、今でも新しいビジョンが登場するのを待っている。望むらくは、暴政や圧制のないビジョンを。

Ian Buruma
1951年オランダ生まれ。70~75年にライデン大学で中国文学を、75~77年に日本大学芸術学部で日本映画を学ぶ。2003年より米バード大学教授。著書は『反西洋思想』(新潮新書)、『近代日本の誕生』(クロノス選書)など多数。

photo:SSGT F. Lee Corkran

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