天馬の常務が反論「元名誉会長が秩序を乱した」 収納ケース「Fits」の会社で委任状争奪戦

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――会社案では、「物言う株主」とも言われるダルトン・インベストメンツグループの林史朗氏が非常勤とはいえ社内取締役になります。ダルトンは約13%の株を保有する大株主。ダルトンの利益を優先されるおそれはありませんか。

一般株主との間で利益相反が生じるのではとの意見があることは承知している。だが、オーナーシップを持って経営していくこと、責任を持って企業価値を向上していくことは必ずしも悪いことではない。

私ども一族や株主提案された一族(司家)についても、株式の保有比率が問題だとは思わない。問題は、取締役会におけるガバナンスや透明性が確保されていなかったことにあった。取締役会が意思決定機関として組織の上に位置し、指揮命令系統と秩序が保たれている必要がある。

元名誉会長の「精神的な圧」に崩された

――今までは取締役会で意思決定されていなかったということですか。

金田宏(かねだ・ひろし)/1977年生まれ。2017年に総務部付部長として天馬入社。2018年4月常務執行役員新規事業推進室長、2019年6月より常務取締役。2006年創業のIT関連サービス企業スピンシェル代表も兼務(編集部撮影)

元名誉会長は存在感が大きく、言ってみれば精神的な圧もある。力を持って発言されると、取締役らも忖度してしまった。

株主総会で信任された取締役が議論し決議したことを会社として実践していく。そのように秩序立てて動いているものが、取締役でもない外部の圧力によって崩れていくケースが多々起きていた。このようなことが起きると、あるべきプロセスを経て選ばれている社長や取締役の発言を軽視する従業員も出てくる。

――司氏は昨年4月、社員へのハラスメントなどで問題があるとして藤野社長を退任させるべきだと金田会長に直言しました。秩序が崩れたケースとはそのことを指しているのでしょうか。

大きな出来事であったのは間違いない。すごい勢いで「辞めさせろ」と会長に要求してきた。私や会長は、「取締役会を頂点とした秩序を守らなければいけない」「創業家一族で株を3割近く持っていても、7割はほかの株主が持っている。このようなやり方で上場企業の社長を辞めさせるのは問題」と申し上げ、要求を断った。

この一件を機に、元名誉会長を支持する取締役と、秩序の中で経営をしていく考えの取締役とに分かれた。私はいずれまた「社長降ろし」が行われるのではないかと危惧するようになった。ベトナムでの贈賄で取締役会が誤った対応をしていくのはその6カ月後のことだった。

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