20代会社員が1人開発した「伊良コーラ」の正体 新商品の「瓶入りコーラ」は2万本が予約済み
「もっとおいしいコーラを作りたい!」と考えた小林さんは、その日から時間を見つけては自宅でコーラを作るようになる。毎日のようにキッチンに立つこともあれば、週に1回、2回になることもあったが、とにかくコーラを作り続けた。それは趣味的な楽しみであり、リフレッシュだった。
しかし、ネットに載っていたエッセンシャルオイルで作るコーラと、スパイスから作るコーラでは工程が異なる。スパイスから作るには火を入れる過程が入るため、自分で工夫を重ねるしかない。
気がつけば1年が経ち、2年が経っても感激するような味にはならず、さすがに煮詰まってきた。「もうやめようかな」と諦めかけたとき、実家に戻る機会があった。2017年に祖父の良太郎さんが亡くなり、「伊良葯工」の工房を整理することになったのだ。
片付けをしていると、良太郎さんが使っていた古い道具や書きためたレシピなどがたくさん出てきた。自然と、家族で良太郎さんの思い出話に花が咲いた。そのときに、「火を入れてるときにこんな大変なことがあったよね」「こんな風に手間をかけていたよね」という話になった。「ふーん、そんなやり方してたんだ」と耳を傾けていた小林さんは、ビビッと閃いた。
「このやり方をコーラ作りに生かせるかもしれない!」
当時、コーラを作っていることを家族に話していなかった小林さんの胸のうちは、静かに熱くなっていた。
「お金払っても飲みたい!」
自宅に戻ると、すぐにコーラ作りに取りかかった。実家で聞いた良太郎さんの話をヒントに、それまでのやり方を変えた。
「企業秘密になっちゃうので詳しくは言えないんですけど、いろいろな材料をいっぺんに煮込むと、ベタッとした感じになるんです。スパイスに火を入れる工程と煮込む順番をどう工夫するかっていうところですね」
出来上がったのは、過去2年間作っていたものとはまったく別物のシロップ。炭酸水を入れて飲むと、風味豊かでコクのあるコーラに仕上がった。これは……と思い、翌日、会社に持参して、仲のいい同僚に声をかけた。これまで試作品を何度か飲んでもらっていた同僚は、新しいコーラを一口飲んだ瞬間、驚きの声を上げた。
「めちゃくちゃおいしい! これ、普通にお金払っても飲みたい!」
あ、これ売り物になるんだ──。コカ・コーラの生みの親、ジョン・S・ペンバートン博士は薬局で試飲してもらったのがきっかけでコーラ作りに乗り出したが、小林さんが大きな手応えを得たのは、オフィスだった。
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