父の虐待で「勉強嫌い」に陥った53歳女性の半生

「おまえのせいで、お父さん、しんどくなった」

「また、わが家のチャンネル権は父が握っていて、唯一、アニメのオバQだけは見せてくれた。それなのにその日は、自分が好きな番組をつけ、『こういうのも勉強になるだろう』と恩着せがましく言うので、つい『自分が見たいんでしょう』的なことを口走ったんです。すると、いきなりカレーライスのお皿が飛んできて、命中はしなかったけれど、目の上に当たりました。

はた目には、父親が加害者で、娘が被害者という構図のように見えますが、小さい頃から、父は私が謝っても許してくれず、くどくどと文句を言い続け、最後の捨て台詞は『おまえのせいで、お父さん、しんどくなった』というもの。つまり、父が被害者で、私が加害者であるかのように話を持っていくのです。とにかく被害者意識が強い。そんなわけで、私のほうは、自分が悪いことをしたような罪障感が強くなりました」

それでも、「小学校までは平穏だった」そうだが、中学1年生の夏、父親に強い精神症状が現れたことで状況が暗転する。父親は、その前年に暴力事件に巻き込まれ、重傷を負っていた。「それによるPTSDが時間差を置いて出たのだと思う」と語る。

「私は親戚の家に泊まりに行っていたので、現場は見ていないのですが、夜中に父が浴室にこもり、剃刀で自分の髪の毛を全部、剃っていたのです。頭は血だらけで、怖ろしい光景だったそうです。私が自宅に戻ると、父が丸坊主になっていて異様な雰囲気でした。それ以来、父の目つきが変わり、前以上にすぐに怒鳴るし、いつもイライラしていました。ちょうど私は反抗期で、父親が『お父さんのいうとおりに勉強しろ』といって介入してくるのが本当にイヤでしたね」

なぜ父親は「異常行動」に出たのか?

瑠美さんの父親はなんらかの精神疾患を患っていたと思われるが、知り合いの医師には「軽い神経症ですね」と片づけられ、実質的な医療につながることができなかった。

「いまになって思うと、父はアスペルガー症候群(ASD自閉スペクトラム障害)だったんじゃないかと思います。こだわりが強く、すごく緻密な勉強のやり方をしていた。それを私にも強要するわけです。できないと『許し難い、どうしようもない』と罵倒する。教えているつもりだったのでしょうが、私にしたら折檻ですよね」

一方で、この時点ですでに、父親の境遇を母親から聞かされており、「お父さんは、ずっと苦労してきたし、病気でもある。私の方が守らなくちゃいけない」と思っていたという。

瑠美さんの時代の公立中学は荒れていて、勉強ができるのは生意気だといじめの的にされた。しかし、「父親の頭には勉強のことしかなく、部活も止められ、父の卒業した大学に入ることを至上命令にされました。学校に居場所はなく、どうすりゃいいのって感じでした」

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