小田急ロマンスカーと「新幹線誕生」の深い関係 「SE」来春開業のミュージアムへ"殿堂入り"

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電車の固定観念を打ち破ったSEが「第1号」となった例は技術面以外にもある。資金面では信託銀行が車両を保有して鉄道会社に貸し出す「信託車両」の方式を初めて採用した。鉄道愛好家による「鉄道友の会」が前年に営業運転を開始した鉄道車両に贈る「ブルーリボン賞」は、SEを顕彰するために創設された。小田急のロマンスカーは第1回のSEを皮切りに、実用色が強い「30000形EXE」を除き、「70000形GSE」まで8車種が受賞している。0系新幹線も1965年に受賞した。

最新のロマンスカーGSEと並んだSE=2019年5月(編集部撮影)

1963年にはSEの後継として「3100形NSE」が登場した。小田急初の前面展望室付きロマンスカーだ。前面展望車の投入は名鉄「パノラマカー」にやや後れをとったものの、「7000形LSE」「10000形HiSE」「50000形VSE」、 GSEと後輩車両へ引き継がれ、現在もロマンスカーのセールスポイントの1つとなっている。

受け継がれる伝統

SEで用いられた連接台車は、その後のロマンスカーNSE 、LSE、HiSE、VSEでも採用され、小田急ロマンスカーの独自路線の象徴となった。また、車体色のバーミリオンオレンジは、これらの車両のほか「30000形EXEα」「60000形MSE」の側面の帯に伝統色として継承されてきた。

海老名の車庫で長く隠居生活を送っていたSEも、この数年で新たな動きがあった。

小田急が海老名駅隣接地に建設中のロマンスカーミュージアム(記者撮影)

中間2両が車両収容スペースの確保のために解体された一方、残った3両が2021年春のオープンに向け、小田急が海老名駅の隣接地に建設中の「ロマンスカーミュージアム」にNSE、LSEなどとともに展示されることになった。

戦後まもなく小田急が抱いた「新宿―小田原60分の夢」は2018年春、複々線化に伴うダイヤ改正によって70年越しで実現した。小田急の歴史をずっと見守ってきたSEは現在、いったん海老名の車庫を離れて再び多くの人の注目を浴びるときを待っている。ミュージアムでは展示車両の主役になるのは間違いない。小田急のCSR・広報部の担当者は「SE車はロマンスカーの先駆けになった車両。未来を担う子供たちに歴史的価値を伝えていきたい」と話している。

橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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