1980年代を通じてアメリカの金融界は、様々な企業不正、経営者によるスキャンダルをただすために、コーポレートガバナンスと呼ばれる企業統治を強化してきたのに、これではこれまでの努力を無にし、無法地帯だった70年代に時計の針を戻してしまうことになります。
「蜃気楼」を信じる投資家が買っているだけ
投資銀行は「売れるんだから文句あるか」、と開き直り、経営者は自分が経営権を保有していた方が経営に必要な判断が早くでき、結果的に株価もあがるのだから投資家に悪いことは何もない・・と、うそぶいています(ザッカーバーグ氏など)。
しかし、時には経営者に対し既存株主が物を申す、というのがアメリカ資本主義のダイナミズムの源泉で、この緊張感があるからこそ成長を果たしてきたと言う歴史があります。
経営がおかしくなった時、議決権のない株主だらけの企業では経営方針の変化は要求できないですし、経営者交代の議決の提案も不可能です。なにより株価が落ち始めてしまえば、こんな価値のない株式を買おうとする投資家が出てくるはずもありません。常に業績が順調で株価が上がるという「蜃気楼」を信じていればこそ、価値がある株式と言い換えてもいいかもしれません。
その株価が、ひとたび半値になってしまうような事態が起きれば、議決権なしの株式などは企業買収の対象にすらできないので、おそらく際限なく下がり続けるでしょう。
そういう株式が続出すればリーマンショックどころではありません。企業統治のできないゾンビのような企業が市場を闊歩し、それが現在のアメリカ経済を引っ張っている主要なITセクターの企業に集中している、という状態は、決して楽観視できるものではないでしょう。
あとから振り返れば、「あんなものがなんであんな値段になったんだろう」と思うのが、バブルの常であります。今回もワタクシの経験から言えば、間違いなくこのバブルに該当すると考えています。
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