つまりIPOをしたり、新規株式を発行しても資金は調達できるし、経営者の支配権が全く劣化しない、という矛盾を抱えたファイナンスが続々と登場しており、また、これが堂々と売れまくっているという事情が、昨今のナスダック上昇の裏に隠されているのです。
既存経営者の支配継続を可能にする「クラス分け株式」
具体的には、新株発行をする場合にその株式をクラス分けしてしまい、1株に対し10もの議決権を与える株式を発行してそれを引き続き経営者が保有したり、場合によってはまったく議決権のない株式のクラスを設定して市場に売り出し、経営権の希薄化を防ぐといったような手法をとっています。
先日、グーグルはこれに該当する「クラス3」という株券を発行、これにより、議決権の過半数を経営者が握っています。フェイスブックは2012年のIPO時にすでにクラスを2つに分けて、株数が増えてもザッカーバーグCEOの支配権は全く変わらないという不可思議なファイナンスとなりましたが、それでもIPOは大成功となりました。
このほかにも「グレーター・サンフランシスコ」の新しい企業では、このファイナンスのやり方が日常化しており、実はハイテクだけでなく、異業種にもこの種の「クラス分け」が広がりつつあります。中には「新株購入者は株主総会への出席ができない」、などというとんでもない条項が入った株式もあって、その様相は「やりたい放題」を呈していると言ってもいい。
通常は、こんな無茶な条件のついた株式など見向きもされないのですが、昨今のナスダック上昇、順調な決算を背景に儲けに目にくらんだ投資家が、議決権のない株式などに殺到しているというのが現状なのです。
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