北朝鮮、「南北連絡事務所」爆破で高まる緊張 南北首脳会談の成果を北朝鮮が一方的に破棄
北朝鮮人民軍総参謀部の16日午前の発表によれば、2018年9月に平壌での南北首脳会談後に出された「南北軍事分野合意書」の無力化を宣言した。合意書は、地上での敵対行為の中止や軍事境界線を基準に南北10キロメートルの地帯に緩衝地帯を設けて軍事演習を中止するといった内容だ。
人民軍総参謀部は「北南合意にしたがって非武装化された各地帯に軍隊が再び進出して前線を要塞化し、対南軍事的警戒をさらに強化するための措置を講じるよう、方法を研究する意見を受け入れた」と明らかにした。韓国に大々的にビラを散布する計画も示唆した。
金与正第1副部長は6月4日、韓国の脱北者団体が北朝鮮に向けて気球で飛ばしたビラ散布を批判する談話を発表。南北共同連絡事務所や開城工業団地の撤去、南北軍事分野合意書の破棄を予告した。次いで13日に発表した談話では、「遠からず、役に立たない北南共同連絡事務所が跡形もなく崩れる悲惨な光景を目の当たりにすることになるだろう」と述べ、韓国へ軍事行動を行うことを明らかにした。
南北境界線で再武装化の可能性も
北朝鮮は今後、どのような軍事行動に出るのか。北朝鮮の総参謀部は「北南合意で非武装化された地帯に再び進出し、前線を要塞化する」と明らかにしており、南北軍事分野合意にしたがって撤去された非武装地帯(DMZ)の監視哨所(GP)を復活させることがありうる。ここに重火器が再度配備され、DMZでの軍事的緊張が高まる可能性が高く、南北間で銃撃戦が発生することもあるだろう。
軍事境界線(MDL)5キロメートル以内で砲撃・射撃訓練を中止する南北軍事分野合意を破棄し、MDL近くで射撃訓練を行う可能性も指摘されている。
非武装化された南北軍事境界線上の共同警備区域(JSA)では、北朝鮮側警備兵が再び拳銃を携帯するなど、再武装を行うことも十分にありうる。南北は2018年に、JSAに配置される警備兵が拳銃を携帯することをやめ、監視哨所にある重火器を撤去した。
韓国のシンクタンク・統一研究院の洪珉・北朝鮮研究室長は「JSAは南北が非武装化を行い、偶発的な衝突を防止する象徴的な場所。世界から注目されることも多く、北朝鮮は自らの姿勢をアピールするためにも、JSAで再武装化を行う可能性がある」と指摘する。
海上での挑発行動も排除できない。黄海上に引かれた「北方限界線」(NLL)付近の海岸に配備されている砲門を北朝鮮側が開き、NLLを越えて砲撃する恐れもある。韓国軍事問題研究院のキム・ヨルス安保戦略室長は「北朝鮮がこれまでも問題として取り上げてきた黄海上にある韓国側の5つの島に対し、武力を使用することもある」と見ている。
総参謀部は16日、韓国側に向けてビラを散布するために「地上前線と黄海上の多くの区域を開放」といった表現を使い、南北境界線付近でのビラ散布を予告した。北朝鮮の戦略的要衝の地である開城工業団地に再び部隊を配置する可能性もある。
北朝鮮は開城と板門店付近に第2軍団所属の第6師団と第64師団、第62砲兵旅団を展開してきたが、2003年12月に開城工業団地が着工されたため、これらの部隊は他の場所に移された。開城とソウルは直線距離で約60キロしか離れておらず、北朝鮮が自走砲や放射砲などを再び配置すれば、ソウル首都圏に対する脅威が高まる。(韓国「ソウル新聞」2020年6月17日)
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