北朝鮮、「南北連絡事務所」爆破で高まる緊張 南北首脳会談の成果を北朝鮮が一方的に破棄
北朝鮮は6月16日、北朝鮮側・開城市にある南北共同連絡事務所を爆破した。
2018年の南北首脳会談後に出された「4.27板門店宣言」の成果の1つである同事務所は、6月13日に北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の妹である金与正朝鮮労働党第1副部長が爆破すると予告してから、わずか3日後に実行に移された。
これにより、南北関係は対決と緊張が深まっていた2018年以前の状況へ後退することになる。同時に、北朝鮮の金正恩委員長がこれまで世界に対して積み上げてきた、「対話と交渉が可能な指導者」というイメージも崩れた。
北朝鮮非難のビラがきっかけに
北朝鮮の朝鮮中央通信は6月16日午後5時、「北南共同連絡事務所が完全破壊された。くずとそれを黙認した者らの罪の代価をすべて受け取るべきだという激怒した民心に応えて、北南間のすべての通信連絡線を遮断したのに続き、開城工業地区にあった北南共同連絡事務所を完全に破壊する措置を実行した」と報道した。
ここで「くず」とされているのは、北朝鮮に向けて金委員長体制を非難するビラを気球で散布してきた脱北者団体のことを指す。
韓国統一省は16日午後3時54分、「北朝鮮が午後2時49分に、開城にある共同連絡事務所庁舎を爆破した」ことを確認した。これより先に、韓国軍当局は北朝鮮に向けられた監視装備で開城からの爆音と煙をリアルタイムで観測し、鄭景斗国防相は合同参謀本部指揮統制室で状況報告を受けた後、北朝鮮に対する監視・警戒態勢を強化した。
合同参謀本部に当たる北朝鮮の人民軍総参謀部に「対敵行動権」を移したと金与正第1副部長が公言した後、これほど迅速に行動に移したことは極めて異例だ。こういった軍事行動が今後も続けば、朝鮮半島の緊張がさらに高まる。
特に、2000年の「6.15南北共同宣言」20周年に際し、文在寅大統領が15日に「8000万同胞の前で行った朝鮮半島の平和の約束を後戻りさせることはできない」と述べたにもかかわらず、その翌日に南北共同連絡事務所を破壊したことで、北朝鮮に融和的だった韓国大統領府の態度も変わってくるとの見方も出ている。