ボルボの大型新人「XC40」発売2年後の通信簿 最長1年の「納車待ち」が起きた人気の理由

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室内のパッケージングは、前席優先という印象が強い。つまり後席の広さを重視する設計ではなく、言い換えればファミリーカーとするには空間は少々、狭い。ファミリーユーザーはXC60など、よりボディの大きなモデルを選ぶことをオススメする。

「R-Design」のインテリア(写真:ボルボ・カーズ)

一方、460Lを誇る荷室はクルマの見た目に対して広い印象で、後席を倒すと床が完全にフラットになるボルボのこだわりが貫かれているのも、好感が持てる。その際の荷室の奥行きは1.8mを超えるため、その気になれば大人2人がゆったりと横になって寝られるほど。ここは大きく評価したいポイントだ。

走りに関しては軽快感が強い。エンジンは2種類あり、どちらも2.0リッターの直噴ガソリンターボだが、それぞれチューンが異なる。最高出力/最大トルクは「T4」と呼ばれるタイプが140kW(190ps)/300Nm(30.6kgm)、「T5」が185kW(252ps)/350Nm(35.7kgm)だから、ベーシックなT4でもかなりパワフル。

そのうえ操縦性はキビキビとしていて、おおらかさが特徴だったかつてのボルボとは大きな違いを感じるが、昨今のトレンドに従った味付けだ。専用スポーツサスペンションを装備する「R-Design」では、さらにその軽快感は増す。なお、「T5」はAWDのみだが、「T4」にはFFも設定されている。

ボルボの将来を背負う“大型新人”

新世代コンパクトSUVのXC40が、ボルボにもたらした最大の功績はなんだろうか。

ボルボの新たなエントリーモデルとして重大な使命を負う(筆者撮影)

それは、「新規ユーザーの開拓」である。XC40のオーナーは、歴代のボルボを乗り継いできた古くからのオーナーではなく、初めてボルボを手にした人が多い。

彼らは先進安全装備やデザイン、そして北欧車ならではの雰囲気などに魅力を感じて「ボルボへの初めての1歩」を踏み出したのだ。

だからこそ、ボルボにとってこれまでなかった新ジャンルのニューモデルにもかかわらず、人気車種となったのである。さらには、XC40でボルボを気に入ることになれば、次もボルボ車を購入してくれる“常連”に成長してくれる可能性も高い。

つまりXC40は、ボルボの将来を左右する可能性を秘めた“大型新人”と言えるのだ。

工藤 貴宏 自動車ライター

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くどう たかひろ / Takahiro Kudo

1976年長野県生まれ。大学在学中の自動車雑誌編集部アルバイトを経て、1998年に月刊新車誌の編集部員へ。その後、編集プロダクションや電機メーカー勤務を経て、2005年からフリーランスの自動車ライターとして独立。新車紹介を中心に使い勝手やバイヤーズガイド、国内外のモーターショー取材など広く雑誌やWEBに寄稿する。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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