コロナショック後のアメリカに訪れる暗い結末 80年周期の中での「4度目の転換期」が持つ意味

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そもそもコロナパンデミックの前から実体経済の減速は始まっており、トランプ政権にとって、大統領選とぶつかる最悪の11月頃の景気後退は見えていた。 一方、民主党のエリート層にとっても、候補者がバーニー・サンダース氏になることだけは許されなかった。ちょうどそこにコロナ危機。株は下がった。そしてリーマンショックを超える救済策を繰り出した財務省とFED(アメリカの中央銀行)。結果、トランプ大統領とナンシー・ペロシ下院議長は、サンダース氏が主張した社会主義政策を超える救済政策を断行した。

リーマンショック後、「もし次にマーケットがおかしくなったら、金利をゼロにした時点でFEDには救済策がない」。これが昨年まで言われていたことだった。

ただそれはFEDが、過去の救済策の範囲で行動した場合である。3月に株価が急落している最中、ヘッジファンド経営者が「資本主義を救うための社会主義の救済が必要だ」と訴えていたが、アメリカが、やむなく社会主義的な政策を行うなら、それは「社会主義者」のサンダース氏ではなく、自分達が行わなければならない。なぜならそうしないと、前述のプルトクラシ―が維持できないからだ。それには相応の理由が必要である。サンダース支持者には気の毒だが、彼を排除しての救済は、準備されていたシナリオだったと思う。

「リーマンの時のような悪者がいないこと」が条件

では相応の理由の条件とは何だろう。5月29日、ジェローム・パウエル議長はプリンストン大学が主催するイベントで、アラン・グリースパン議長時代のFRB副議長だったアラン・ブラインダー氏と対談した。2人ともリベラル色で有名なプリンストン大学のOBである。

そこでパウエル議長は、今回の救済が、リーマンショック後に制定されたドットフランク法の11条:「緊急時にFEDは議会の承認なしに緊急融資を行える」に基づいていることを強調した。確認したが、そこには具体的な手段の明記はない。

恐らく、2010年のドッド=フランク法制定の立役者、クリス・ドッド元上院議員もバーニー・フランク元下院議員も(ともに民主党)次にどんなパニックが襲ってきても、FEDが直接中小企業に融資をし(今回は5億円から500億円が実行)、さらにバブル経営で経営が傾いていた会社の社債を買うなどということは想定していなかったはずだ。

だがパウエル議長は言った。「われわれが過去のレッドラインを超えたことは承知している。だがそれは許されるはずだ。なぜなら、今回はリーマンショックの時のような悪者はいない。パンデミックなら許されるのだ」。

「リーマンの時のような悪者はいない」。そう。これが、アメリカが(FEDが)サンダース氏のチャンスを潰したうえで、自分たちが社会主義政策を断行する条件だったのである。

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