コロナショック後のアメリカに訪れる暗い結末 80年周期の中での「4度目の転換期」が持つ意味
ではその責任は誰にあるのか。メディアは、黒人への差別、人権運動をきっかけに、若者が持つ不満の責任は、すべてトランプ大統領の政策と、大統領自身の「ポリティカルコレクトネス」(偏見や差別を含まない中立的な態度や表現など)の欠如にあるというプロパガンダを続けている。ただ筆者の感覚では、それは正解とはいえない。この30年、全体として豊かさをもたらしたグローバリゼーションは格差社会も作った。
さらに2008年のリーマンショックでは、ショックを起こした張本人の金融機関を真っ先に救済した。そのことで、金融市場を牛耳る金持ちが、次の社会においても最大の恩恵を受けるプルトクラシ―(支配層が民のお金を横領して富を増やすこと)が加速したのは事実だ。これが、ミレニアル世代が抱える不満の最大の原因である。今回の一連の救済でも、4000万人が失業する一方、トップ8人の資産が50兆円増えた。
だとしたら、その原因を作ったのはトランプ大統領ではない。先日のジェームズ・マティス前国防長官の発言「トランプ大統領は自分の経験では初めて分断を加速する大統領」はその通りだが、トランプ大統領は分断の直接の原因ではない。結果としての現象、ナショナリズムの台頭から生まれてきた大統領である。分断の原因はむしろその前の時代にあった。だが選挙は近い。黒人死亡事件からの一連の今のトランプ大統領へ批判は、そういう過去の真実を、人種差別問題へスピンさせる政治の思惑を感じる。
「2~3月の光景」と、どこか似ていないか
そんな中で米株のインデックスは、6月11日に急落したものの、まるで喧騒は別の星の出来事であるかのように上昇を続けているように見える。実態経済(社会)と株価の乖離は今に始まったことではない。またコロナの影響が出始めた2月初旬にも同様の光景があった。
だが3月、突如株は下がり始めた。そこに特別な理由はなかった。プロの間ではWS(ウォール街の銀行)のデスクが弱気に転じたことは認識されていたが、今回も同じだろう。前回の寄稿「今のままではトランプが負けるこれだけの理由」で紹介した、「米株は高値を更新すると予想した」JPモルガン社のアナリストは、高値を更新する前「底値から40%戻ればいったんは再び調整になる」とも予想していた。では、相場のリード役は誰なのか。結果は早晩わかるはずである。
そして3月にコロナで株の下落が始まったのは、ちょうど民主党大統領候補がジョー・バイデン氏に一本化された後だった。このあたり、相場を見ている立場からからは、なにやら陰謀的な匂いが感じられる。
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