まじめな教師を休職に追い込む4つの深刻問題 心の不調を抱えながら勤務する先生も多い

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① 多忙化・ブラック化

「教師の多忙化」にかかわる要因として、報告書等のさまざまな書類の量が増えていることがあげられます。特に教頭(副校長)の作成する書類の量は、この20年の間で確実に倍以上に増えたと言われます。

以前は暗黙の了解として、多くの先生方が仕事を家に持ち帰っていましたが、現在ではデータの流出の問題を避けるためにUSBを外に持ち出すのが難しくなり、学校に残って仕事を続ける教師がとても多いのが実情です。

ある調査によれば、教師にストレス要因を問う質問に対して、「仕事の量の問題」をあげる割合が、一般企業と比べて教師は約2倍にのぼることがわかりました。仕事の質以前に、単純に「仕事の絶対量」が圧倒的に多いのです。

諸外国と比較しても、労働時間は長い

 教師の勤務時間について、2016年の調査で「過労死ライン」とされる「時間外労働が月に80 時間超え」が小学校で3割、中学校で6割に上ることがわかっています。

そんな中、文部科学省は「変形労働時間制」(教員でいえば、忙しい時期の勤務時間を延長する代わりに、夏休みなどにまとまった休みをとる制度)を提案していますが、これは焼け石に水。教師の労働の「総量」を減らさなくてはまったく解決策になりません。

そもそも多くの教師は夏休み中もほとんど休みなく、研修などに追われているのが実情です。ほかのOECD加盟国と比較しても、日本の教師の労働時間は長く、OECD平均と比べて年間200時間以上長く働いていることになります。教師の残業時間は月に95時間を超えており、この10年で14時間増えています(「朝日新聞デジタル」より)。

しかもそんな中、公立小学校教員の給与を財務省が1.7%削減しました。「図表で見る教育2013」(OECD)によると、日本の公立小学校の教員の初任給は実質「時給679円!」になるというのです。これはあまりにブラックな数字です(TEACHEERS)。これでは教員志望者が激減するのも無理のない話です。

小中学校の教師の一日の平均勤務時間は11時間を超えています。小中学校とも週の労働時間が50時間未満の教員はほとんど存在せず、小学校で約73%、中学校で約87%が60時間以上も働いているという実態があります。

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