働く「小学生の母」、臨時休校中の苛立ちの正体 3500人調査で判明した「小学生の父」の行動

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さらに興味深い発見は、親と同居している場合、小学生の子どもの有無は夫婦の「在宅勤務」にまったく影響しないことだ。働く父母は子どもの世話を親に任せることで、子どものために「在宅勤務」する必要はなくなる(親が子どもの面倒を見ることが可能であると仮定するために、ここでは80歳を超えた親は含まない)。

国内外の先行研究によれば、親が子守をすることで、女性の労働参加が促進されることが明らかになっている。これは、われわれの分析結果と整合的である。

中学生だからといって安心はできない

また、中学生の子どもの存在は、フルタイム勤務者の性別に関係なく、「在宅勤務」に影響しない。中学生ともなれば、ある程度自主性に任せることが可能になるので、「在宅勤務」の必要性が低下すると解釈できる。もっとも、近年の精緻な実証研究からは、親の目が行き届かないティーンエージャーは、非行に走る傾向にあることがわかっている。中学生だからずっと1人でも大丈夫ということにはならない。

いずれにせよ以上の分析結果からわかるのは、令和の時代に入った現在でも、「働き方」に大きな男女差があることである。日本は『世界性差報告書』(2020年版)で、女性の社会的地位は153カ国中121位となっている。これを踏まえると筆者らの分析結果は、なんら意外な結果とは言えない。

海外の新型コロナの経済分析は急速に進展している。例えば、ホワイトカラーの女性労働者ほど、働く場所の制約を受けないリモート・ワークがしやすいという。これを肯定的に考えるならば、ポストコロナの時代は女性活躍の時代と言えるのかもしれない。しかし、それは一面の真理にすぎない可能性がある。

少なくとも、われわれの分析結果から描かれる「共働きのホワイトカラー」夫婦の日常は、妻が仕事も家事も子育ても一手に担い、夫は仕事に没頭する様子である。

新型コロナが終息した後でも、夫婦間での負担格差が拡大していく可能性がある。妻の不満は増幅され、放置しているといつかそれが大爆発するかもしれない。例えば筆者の推計では、50歳以下のフルタイム雇用の女性で小学生の子どもがいない場合、「怒り」を感じるのは33%。この値が、小学生の子どもがいるだけで50%に跳ね上がる。この変化は男性には表れない。

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