働く「小学生の母」、臨時休校中の苛立ちの正体 3500人調査で判明した「小学生の父」の行動

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教育・家族経済学などの研究によれば、大人がそばにいて適切に子どもと過ごすことが、その後の成長にとって必要不可欠である。専業主婦などは、生活パターンを大きく変えることなく臨時休校に対応できたであろう。

小学生の父親は在宅勤務を減らした

問題は仕事を持つ母親がどのように対処したかである。この実態を探るために、筆者らはフルタイムで会社などに勤務する人を抽出し、学齢期の子どもの存在が働き方に及ぼす影響を分析した。

調査では「在宅勤務」の程度を質問している。また、回答者の性別、「小学生の子ども」の有無、「中学生の子ども」の有無、さらに「同居する親」の有無についても聞いている。これらの情報を利用して統計分析をしたところ次のことが明らかになった。

(1)フルタイム雇用について、小学生の子を持つ女性の42%は完全に在宅勤務する。小学生の子がいない場合、その比率は26%にとどまる。

この結果から、母親は小学生の子どもの世話をするために、「在宅勤務」を選択するようになったことがわかる。これは、十分予測可能な結果であろう。分析からは、次のことも明らかになった。

(2)フルタイム雇用について、小学生の子を持つ男性で完全に在宅勤務しているのはわずか3%。小学生の子がいない場合その値は21%にまで上昇する。

小学生の子がいなければ、男女の差は5%にすぎない。この事実は「男女共同参画社会」がある程度実現していることを示唆する。一方、同性の中の小学生の有無による差は15%を超える。驚くことに、性差の3倍である。

これは不思議な結果かもしれない。「女性が活躍する社会」を目指し、イクメンも増えた社会では、男性も小学生の子どものために「在宅勤務」を選択しそうなものだ。しかし、データが示すのは、正反対の現実である。謎解きをしてみよう。

共働き夫婦の場合、夫か妻のどちらかが家にいれば。小学生の子どもの世話をすることが可能である。夫婦のうち残りは、外に出ても大きな問題はない。

データが示すのは、妻が「在宅勤務」しているので、夫は子どものことは妻に任せ会社へと通勤している実態だ。さらには、家にいると気詰まりという心理もあるだろう。

企業側が男性の「在宅勤務」を認めないという可能性は低そうだ。なぜなら、小学生の子がいない場合、男性の「在宅勤務」が顕著に増加するからである。

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