「氷河期再来」と語る人は就活の構造を知らない

コロナショックの採用減はあるが根本が違う

先に紹介した共同通信社のアンケートを見ると、全体の36%は「採用数は昨年と変わらない」と回答している。「増やす」と答えた9%と合わせると全体の半分近くは現時点で「採用を減らさない」と決めている。「未定」と答えた中にも昨年同様の方針に落ち着く企業が含まれるかもしれない。

5月1日時点の就職内定率についても「5年ぶり前年割れ」の見出しに釣られてしまうが、要は採用活動の停滞を伝えていて、4月1日時点では2016年以降で最高の31.3%だった。

この調査に限らず、就職情報会社が発表する就職内定率はモニター調査であり、積極的な学生が回答するがゆえに、就活に関わる学生や採用担当者や大学関係者の実感値よりも高めに出ると言われているとはいえ、混乱している状況下で半分の学生は内定を持っている。

内定率は求人数だけでなく、採用活動の時期によっても変動する。今の時点で、ここ数年に比べ5月に入ってからの内定率が鈍化したのは事実だが、採用数が減ったかどうかはまだ判断できない。

2000年前後の就職氷河期は構造問題だった

そもそもかつて2000年前後に深刻な就職難に陥った就職氷河期を作り出した要因は、単に景気の悪化だけではない。就職氷河期とは、複合的な要素が絡み合った構造問題でもあったからだ。

就職氷河期という言葉が誕生したのは1992年の秋だ。リクルート(当時)の就職情報誌『就職ジャーナル(現在はウェブ版に移行)』に掲載された。バブルが弾け就活が混乱した頃に生まれた言葉だった。1994年には流行語大賞の部門賞を受賞している。

この就職氷河期がより深刻になるのは、約10年後である。文部科学省の「学校基本調査」によると、就職も進学もない新卒無業者は2000年卒から2003年卒にかけて4年連続で全体の2割を超えていた。リクルートワークス研究所が発表する「大卒求人倍率」調査においても、2000年卒は初めて1.00倍を切った。

バブル崩壊によって経済が傷みまくる一方、バブル期の大量採用が企業の重荷となった。不良債権と余剰人員を抱えているのに、終身雇用が前提で解雇要件も厳しいという日本型雇用を背景として、企業は新卒採用を抑制し、非正規雇用の拡大に舵を切った。正社員の「入り口」を絞り、調整しやすい非正規雇用を増やすように雇用構造を転換して乗り切ろうとした。とくにサービス業は、非正規雇用を戦力化・基幹化することにより成長した。

大学も大学生もそれまでよりも増えていたし、就活の手段もバックアップ体制も変わっていったのも、要因ではある。1990年代後半から2000年代前半にかけて、就活はウェブにシフト。就職協定も廃止され、その後数年は就活時期が前倒しになり青田買いが横行し混乱していた。自由競争が加速した状態だったと言える。

また、よく今回のコロナショックと比較されるリーマンショックだが、この頃の大卒の新卒無業者比率は就職氷河期の後半よりも改善されており、2009年卒が12.1%、2010年卒が16.1%、2011年卒が15.9%、2012年卒が15.6%だった。なお、リーマンショックは2008年の秋に発生したが、それまでは売り手市場であり採用活動が進んでいた。よりダメージが出たのは2010年卒からだった。

これは経団連の新卒採用に関するアンケートでも明らかだが、大企業を中心とする経団連企業ですら採用をストップしたのが2000年代前半だった。ただ、リーマンショック後も、東日本大震災後も採用活動を止めた企業はわずかだった。

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