ただ、この数字も、「倍率」ではなく「求人総数」と「民間企業就職希望者数」をみると新たな発見がある。この部分を抜き出したグラフが下記だ。
一目瞭然なのは、民間企業就職希望者数が1987年卒から2012年卒まで右肩上がりで増え続けていることである。これは、大学も、大学生も数が増えたことによる。1992年に大学の設置基準が大綱化され、大学、学部を新設しやすくなった。
もちろん、大学は短大などから改組したもの多い。大学生の増加に関しても、短大から4大に切り替わったという要因もある。18歳人口に対する4年生大学の進学率も上がり続けた。平成元年の18歳人口に対する4年生大学進学率は24.7%(男性34.1%、女性14.7%)だったが、ほぼ上昇を続け1994年に30.1% と30%を突破。2002年には40.5%と40%を、2009年には50.2%と50%を突破している。現在は55%前後で推移している。
求人総数にも注目したい。この34年間での底は1996年卒の39万0600件であり、2000年にも41万3000件となっている。波があるものの、基本、大卒の求人総数は増えるトレンドになっている。産業構造も変化し、新たな成長産業も生まれた。
若者のレア感は増してくる
そして、大学進学率はついに55%に達したが、今後、若者は減少していく。それに併せて進学率がますます上がる可能性もあるが、若者のレア感が増してくるというシナリオもある。
企業の採用意欲、大学のサポート体制、マッチング手段の多様化などが、1990年代の就職氷河期と言われた時代と、これからの就職戦線の違いである。
とはいえ、ここ数年の売り手市場に比べると、今後の就活は間違いなく厳しい。こういう局面でブラック企業が跋扈するかもしれない。就活が苦しいから仕方ないという学生たちにとって、カリスマ的経営者のメッセージがこの局面では響いてしまい、心配する学生にうまくつけこんでくる。
ミスマッチによる早期離職も増えるかもしれない。ウェブ説明会や面接により、互いに組織風土や人柄を理解できない状態になってしまうこと、この局面ではなんとか1社、どこにでもいいから内定を取ろうとする学生が現れるからだ。一方、学生が慎重になるがゆえに、内定辞退も増えることだろう。
今後はコロナショックの影響がいつまで続くか、これにより企業の業績がどこまで悪化し、働き方がどこまで変化するか。ここに注目が集まる。単にコロナショックによる景気悪化だけで学生が路頭に迷うのではない。今後の就職戦線を「就職氷河期の再来」を想起すると考えるのは、雑な話なのである。
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