加地亮、カフェ経営者が説くコロナ前向き思考 サッカー元日本代表は「走りながら考える」

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「7月以降、お昼の収益はトントンか赤字。夜をフル稼働させないと黒字化は難しいですね。経営の問題もありますけど、それ以上にお店から感染者を出さないことが大前提です。

6月上旬、ビデオ会議システムZoomを用いて加地さんにインタビューを実施した(画像:Zoomミーティング画面をキャプチャ)

外での食事は楽しむために来るはずなのに、お客さんが『ここで食べていて大丈夫?』なんて不安になるようだったら、せっかくの料理もおいしくなくなる。

僕はサッカー選手のときから『できる準備はすべてやる』という考え方でしたから、万全の対策をとるのはその頃とまったく同じですね。

具体的には、まずサーモメーターを導入して入店時に検温し、消毒を徹底してもらいます。僕らスタッフも営業中は全員マスク着用。夏場のマスクは正直、相当暑いでしょうけど、僕はサッカー選手だったので、夏場の試合のときみたいに汗をかかないぶん、耐えられる。まだ幸せだし、余裕です(笑)。

そうやってつねにポジティブに考えていないと時間がもったいない。不満を言っていても何も始まらないので、自分にできることを1つひとつやって、走りながら考えていくつもりです」

オシム監督の名言「走りながら考える」

その「走りながら考える」という言葉は、加地さんの日本代表時代の恩師の1人であるイビチャ・オシム監督の名言だ。

サッカーは刻一刻と状況が変わるため、数秒先の展開も予想がつかない。だからこそ、高度な集中力を維持しつつ、状況を見ながら最良の判断をすることが重要なのだ。そういった行動パターンが長年の経験から身についている加地さんはコロナ禍に見舞われても冷静だ。もちろんオーナーの妻・那智さんも中心となってサポートしてくれているし、社員の助けも大きい。そんな彼らの力を借りながら、飲食業を営む1人として、何とかこの困難を乗り切っていく構えだ。

「『CAZI CAFE』の場合、僕1人で考えているわけではありません。奥さんと社員とみんなで話し合って『こうしよう』と決めています。そんな風通しのいい環境だから本当に助かっています。僕なんか『経営者』って肩書がついていますけれど、お店に入って皿洗いからお運びまで全部やっていますからね。その大変さも実際にやってみてよくわかりました。

元サッカー選手とか日本代表っていうアドバンテージなんか何もないし、単なる1つの店の経営者でしかない。そういう自覚を持って、地道に一生懸命やっていきます」

コロナ完全終息までは厳しい状況が続くかもしれない。資金繰りに奔走する日々が続く可能性も否定できないが、明けない夜はない。加地さんはポジティブシンキングを忘れず、全力で「CAZI CAFE」を守り続けていく。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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