コロナワクチンの開発が何とも進みづらい事情

収束で消える「感染地帯」、治験最前線の悩み

ワクチンの治験では、参加者を治療群と対照群に無作為に分け、治療群には治験用の試作ワクチンを投与し、対照群にはプラセボ(偽薬)を投与する。

治験参加者は、疾病が広まっているコミュニティに戻り、その後の感染率を比較する。期待されるのは、プラセボを投与した対照群における感染率の方が高く、ワクチンが治療群を守っていることが示されるという結果だ。

英国、欧州大陸、米国におけるCOVID-19(新型コロナウイル感染症)の流行がピークを越え、新型コロナウイルスの感染率が低下しつつあるなかで、科学者らにとって重要な仕事は、波のある感染状況を追いかけ、まだCOVID-19が活発な人口集団・国において治験参加希望者を見つけることである。

2014年、西部アフリカにおけるエボラの大規模流行の際に、科学者らが新たなワクチン候補の治験を行おうとしたときにも、似たような問題が発生した。当時、製薬企業は大規模治験の計画を大幅に縮小せざるをえなかった。感染者数が減少し始めた流行末期になって、ようやく治験用の試作ワクチンを用意できたからである。

海外感染地での実施検討も

COVID-19用ワクチンのうち、先頭を切って「フェーズ2」治験、つまり開発の中期段階に入るものの1つが、米国のバイオテクノロジー企業モデルナによるものだ。

もう1つは、アストラゼネカと提携してオックスフォード大学の科学者らが開発中のワクチンである。米国は7月、ワクチン1種あたり2万─3万人のボランティアによる大規模な有効性試験を行う計画である。

コリンズNIH所長によれば、米国の医療当局者は、まず政府機関・医療産業が持つ国内の臨床試験ネットワークを利用し、感染状況マップを使ってウイルスの活動が最も盛んな地域を見極めることになるという。国内の感染率が低くなりすぎれば、海外に目を向けることが検討されるだろう、と同所長は話している。

米国政府はこれまでにも、HIV、マラリア、結核のワクチン治験をアフリカで行った経験がある。

「アフリカでは現在、COVID-19の感染例が多数発生しつつある。治験の一部をアフリカで行いたいということになっても不思議はない。効果的にデータを集められることが分かっているからだ」とコリンズ所長は言う。

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