自販機市場にとっての逆風はほかにもある。人件費を中心としたコストの増加だ。自販機に商品を補充する作業は重労働と長時間労働が一般的で、人手が定着せずに人件費が上昇し続けている。売り上げが減少する中、コスト増が利益を圧迫する状況を受けて、多くの飲料メーカーは不採算の自販機を撤去し台数を追わない戦略へと舵を切った。以前はコカ・コーラBJHもその1社だった。
通勤再開で購入戻るので戦略変えず
だが、ドラガン社長は台数削減方針を転換。2019年だけで、1万2000台を新たに設置した。「自販機業界最大の企業として、自販機に人を呼び戻すことと、コスト削減の2つが課題だ」と、決算説明会の場で繰り返し強調している。
同社取締役上席執行役員営業本部長のコスティン・マンドレア氏も、「自販機への投資は大きなリターンとなって戻ってくる。トッププライオリティで投資していく」と、2019年11月の説明会で述べていた。
自販機台数増加を打ち出してから9カ月後となった5月14日の第1四半期決算会見。ドラガン社長は、「コロナ前の1、2月まで自販機事業は計画通りに推移した」と語り、長期的に自販機台数を増やす戦略は変更しない考えを明らかにした。また、マンドレア営業本部長は「いずれ通勤が始まれば、自販機でコーヒーを購入する人も増えるだろう。今後については楽観視している」と言った。
一方、他社からは自販機市場に対して引き続き慎重な声が聞こえる。「昔は台数を増やせば売り上げも上がったが、今は業界全体で売り上げが落ちている」(サントリー食品インターナショナルIR)、「テレワークが浸透すれば自販機による売り上げは減るだろう」(アサヒ飲料IR)、「台数は戦略として減らしている。収益を確保するために採算のいい立地を獲得すればお金がかかるが、そこまでペイしない」(キリンビバレッジIR)。
コロナ禍を機にさまざまな分野で「新常態」(ニューノーマル)の到来と対応が議論されている。人の往来が多かったり人が集まったりする場所に設置することで成り立ってきた自販機事業も取り巻く環境が大きく変わるかもしれない。むしろ、より一層厳しさを増していると言えそうだ。
ドラガン社長は自販機事業を引き続き最優先とする強気の姿勢を崩さないが、そこにどれだけの勝算があるのか。現段階では不透明だ。
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