アメリカの株価が落ちそうで落ちないワケ ナスダックは史上最高値更新が近づいている

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そうした、政策当局の迅速かつ大胆な対応が奏功したことで、人々のマインドは安定している。通常、景気後退局面では人々の恐怖心が刺激され将来見通しは悪化する傾向にあるが、今回は将来見通しが明るいのが特徴的だ。

たとえば、5月のニューヨーク連銀製造業景況指数、フィラデルフィア連銀製造業景況指数に目を向けると、ヘッドライン(現況指数)がリーマンショックのボトムを突き破るほど悪化したにもかかわらず、6カ月先の景況感を問う項目は非常に底堅く推移している。

特に6カ月先の雇用計画を問う項目は底堅く、直近のレベルは両調査とも2019年平均を上回っている。企業は、現在のところは一時的に解雇、雇い止めをした労働者を雇い戻す計画を維持しているのであろう。このように企業マインドがさほど委縮していないのなら、経済活動再開後の企業支出は力強い回復が見込まれる。

金融システムが崩壊を免れたことも株価の支えに

ところで、なぜ企業の将来見通しは安定しているのだろうか。「政策効果」あるいは「企業が新型コロナウイルスの短期終息を見込んでいる」と言ってしまえばそれまでだが、本質的理由のひとつに「金融仲介機能の安定」がある。この点もリーマンショックとの大きな相違点であり、株価の戻りが早いことの一部を説明している。

2008~09年のリーマンショックは金融危機そのものであったから、金融機関側の問題によって、貸出市場へのアクセスが寸断された。その結果、企業の資金繰り環境が急速に悪化したことで、人々の恐怖心が増幅されてしまった経緯がある。しかしながら、今回の危機は米政府やFEDの手厚い支援プログラムも施されたことで、金融システムは崩壊を免れている。

実際、米シニア・ローンオフィサー・サーベイで示される金融機関の貸出態度DIに目を向けると、目下の(融資基準の)厳格化度合いがリーマンショック時より軽度で済んでいることがわかる(ITバブル崩壊の最悪期よりも軽度)。普段株式市場でほとんど注目されることのないこの指標であるが、今回のような危機的状況にもかかわらずリーマンショック時ほど悪化しないことの意味は大きい。

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