アメリカの株価が落ちそうで落ちないワケ ナスダックは史上最高値更新が近づいている

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というのも、企業が倒産する、あるいはそれを回避するために従業員を解雇する(どちらも失業が発生する)という企業行動は、貸し渋りなどその背景に金融機関の融資姿勢があるからだ。失業率が貸出態度DIと密接な連動性があることを考慮すると、金融システムが崩壊を免れていることの意味は大きい。こうした金融機関の融資姿勢が保たれるのであれば、労働市場の回復ペースはリーマンショック時よりも早くなりそうだ。

日本株の2番底リスクも低下

以上みてきたように、アメリカ株は「政策サポート」と「経済活動再開の期待」によって上昇してきた。

足もとでは、企業業績の下方修正が相次いでいることから、株価指標面などで見ると、割高な領域に到達し、勢いよく上値を追う動きとまでは行かなくなってきた。

ただ、強固な政策期待が残存するなかで、金融システムが崩壊を免れ、人々のマインドも安定しているのであれば、2番底到来の可能性は低いと判断される。そうしたなか、日経平均も2万円の大台を回復、足元は大きく上回っている。

アメリカ株と同様、業績見通しの下方修正によって予想PER(株価収益率)が急速に上昇するなか、上昇すればするほど高値警戒感は燻ぶる。それでも、日本株式市場の固有要因として、日銀のETF(上場投資信託)買い入れに対する安心感もある。

また、新型コロナショック以前からのテーマであった5G関連特需が一部実現するなか、テレワークの増加などによってIT関連財の需要が底堅く推移しており、同セクターの牽引力にも期待ができる。

むろん、新型コロナウイルスの感染状況次第ではあるが、アメリカ株の2番底リスクが後退するなかで、日経平均は今後下落したとしても2万円近傍で値固めの展開となるのではないか。

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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