ここで改めて実効再生産数の解説をしておこう。実効再生産数とは「1人の感染者が新たに何人に直接ウイルスを感染させるか」、言い換えると1人の1次感染者が生み出す2次感染者の数を表す指標だ。1を超えれば感染者数が増加傾向、逆に1を下回ればウイルスの流行が収束傾向にあることを示す。
本来であれば個別のケースについて発症日や感染日を特定・推定して計算を行うが、東洋経済オンラインの特設データサイト『新型コロナウイルス 国内感染の状況』では政府の専門家会議のメンバーである北海道大学大学院医学研究院・西浦博教授の考案した数理モデルに沿って、報告日をベースとした簡易的な計算方法で実効再生産数を算出している。
実効再生産数が「1」を超えるのは4都道府県
発症日や感染日を考慮すると、精緻な結果が得られる代わりに調査や推定に時間がかかる。流行動態をなるべくリアルタイムに把握するために近似的な変換を行っている。詳しい解説は5月22日配信『東洋経済が新型コロナ「実効再生産数」を公開』を参照されたい。
実際の計算式は以下に表せる。
福岡県においては、直近7日間(5月22日〜28日)の新規陽性者数は24人、その前7日間(5月15日〜21日)は1人だ。東洋経済オンラインでは西浦教授のアドバイスに沿って平均世代時間を5日、報告間隔を7日と仮定している。これを計算式に当てはめると、以下のようになる。
このような計算式で実効再生産数を算出できる。これを見るとわかるように、福岡県に見られる急上昇は「第2波」である直近7日間の新規感染者数が多いことよりも、分母となる前週の新規感染者数が少ないことにも起因する。感染の規模よりも速さを見るのに適した指標であるため、実効再生産数を見る際には感染者(検査陽性者)の絶対数など別の指標もあわせて確認することが重要だ。
現時点において全国で実効再生産数が1を超える、すなわち前週と比べて感染者が増加傾向にあるのは東京都や北海道など4都道府県。言い換えると大半の地域では収束傾向が続いているが、様々な指標から今後の動きを注視する必要がある。
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