コロナ予防救世主に「ラマ」が急浮上している訳 特殊な抗体はコロナ予防に使えるか
ウィンターはベルギーに住むチョコレート色の4歳のメスのラマ。耳はちょっと曲がっていて、うらやましいくらいに濃いまつ毛をしている。そんなウィンターが、新型コロナウイルスとの戦いで勝利を運んでくれるのではと一部の専門家は期待を寄せている。
ウィンターは特殊な力の持ち主でも何でもない。ただ単にSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)などのウイルスの研究に使われているというだけだ。
以前から抗体研究分野で重宝されてきた
研究チームはウィンターの体内で作られた抗体がSARSやMERSのウイルスの感染を食い止めたことを確認、同じ抗体が新型コロナウイルスの撃退にも使えるのではないかと考えた。予測は過たず、研究結果は学術誌セルで発表された。
ラマは以前から抗体研究の分野で重宝がられてきた。過去10年間を見ても、ラマの抗体はHIV(ヒト免疫不全ウイルス)やインフルエンザの研究に使われ、いずれも新たな治療につながる結果が出ている。
人の体で作られる抗体はH鎖(重鎖)とL鎖(軽鎖)という2種類のタンパク質の鎖が組み合わさってY字型になったものしかない。H鎖のタンパク質はY字の全体に分布しているが、L鎖のタンパク質はYの上側の分岐した部分にしか存在しない。