コロナ予防救世主に「ラマ」が急浮上している訳 特殊な抗体はコロナ予防に使えるか

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

一方でラマは、2つのタイプの抗体を作り出すことができる。1つはヒトの抗体と大きさも構造も似たもの。もう1つはヒトの抗体の25%程度のミニサイズで、形もYの字には違いないが、腕の部分がずっと短くなっている。それもそのはず、この抗体にはL鎖タンパク質が一切含まれていないのだ。

コロナウイルスなどのウイルスは、「スパイク」と呼ばれる突起状のタンパク質を使って宿主細胞に入り込み、人体に感染する。ところがラマの小さな抗体はヒトの抗体には入れないようなスパイクの小さな割れ目やくぼみにも入り込める。つまり効果的にウイルスを撃退できるわけだ。

人に慣れているので扱いやすい

ラマの抗体はまた、簡単に操作できると、この論文の著者の1人であるヘント大学(ベルギー)のグザビエ・サエレン博士は言う。ラマの抗体はヒトなどほかの動物の抗体とつなぐことができ、そうした操作をしても安定しているという。

この抗体はラマを初め、アルパカやグアナコ、ヒトコブラクダなどすべてのラクダ科動物が持っている遺伝的特徴だ。

サメもこうした小さい抗体を持っているが「あまり実験モデル向きではない。ラマみたいにかわいくないし」と語るのは、今回の論文の共著者であるテキサス大学オースティン校の大学院生ダニエル・ラップだ。サエレンによれば、ラマは人に慣れているので扱いやすく、ほかのラクダ科の動物ほど頑固でもない。とは言えやはり「嫌われるとつばを吐きかけられる」そうだ。

テキサス大学オースティン校の構造ウイルス学の専門家であるジェーソン・マクレナンによれば、彼やサエレン、ラップらがラマ(具体的にはウィンター)を使った研究に着手したのは2016年のこと。「さまざまなタイプのコロナウイルスを幅広く撃退できる」ラマの小さい抗体を見つけ出そうとしたのだ。

次ページ新型コロナへの有効性は?
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事