「持続可能なテレワーク」に不可欠な唯一の視点 テック企業の事例に学ぶ「在宅勤務」のコツ

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事実、トランザクティブ・メモリーを醸成するうえで重要なのが対面でのコミュニケーションであると、複数の実験で示唆されている。テキサス大学のカイル・ルイス氏はアメリカのMBA学生を対象とした実験で、直接対話によるコミュニケーションを高頻度で行っているチームはトランザクティブ・メモリーを高めており、これが高いチームほどパフォーマンスがよいと結論づけた。

ここで、テレワークがあくまで「ビジネスチャットツールを介した対話」にとどまると、トランザクティブ・メモリーの形成に支障をきたすリスクがある点に注意したい。テレワークが長期化すれば、徐々に「誰が何を知っているのか」という組織としての知識が空洞化してしまい、中長期的には業績を落ち込ませるリスクがあると考えられる。

それでは、テレワークを持続可能な施策にするためには、どのような対策が有効なのだろうか。

グーグルの方針がモデルケースになるか

テレワークによってトランザクティブ・メモリーの形成が阻まれるリスクに対処するうえでは、5月19日にグーグルの持株会社であるアルファベットが公表した勤務方針が参考となる。

同社のサンダー・ピチャイCEOは、2020年末までにオフィスのキャパシティを従来の20〜30%にすると同時に、従業員の60%が週に1回、ローテーションを組んで出勤できるようにすると、自身のPodcastで述べた。

アルファベットの方針として注目したいのが、オフィス自体をなくすわけではないという姿勢だ。ここから、同社は完全なテレワークよりも、従業員が直接対話できる機会を用意していることがうかがえる。

パーソル総合研究所が全国2万5000人を対象に調査した、4月7日の緊急事態宣言後のテレワーク実施率は27.9%であった。総務省が公表した、2019年5月末当時のテレワーク導入企業の割合は13.9%。コロナ禍もあって、わずか1年間でテレワーク普及率が約2倍に伸びた格好だ。

ここまで普及率が伸びたテレワークの動きを持続可能な施策とするためには、一定間隔で社員同士が直接コミュニケーション可能な仕掛けを組み入れることが有効だろう。ビジネスチャットツールを用いる場合でも、なるべくビデオチャットにしたり、雑談のためのチャット部屋を提供したりすることも、トランザクティブ・メモリーの醸成、ひいては組織としてのパフォーマンス向上に資すると考えられる。

古田 拓也 1級FP技能士

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ふるた たくや / Takuya Furuta

中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。FP技能士センター正会員

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