「持続可能なテレワーク」に不可欠な唯一の視点 テック企業の事例に学ぶ「在宅勤務」のコツ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

売上高は前年同期比で14.6%増加し、四半期としては過去最高の536億円。本業の儲けを示す営業利益は同65.7%増の82.8億円に達した。同社の費用を確認すると、テレワークに移行してもオフィスの賃貸借契約は維持されていると考えられるため、家賃の負担額にほとんど変化は見られない。

そもそも、従業員数が5000人を超えるGMOインターネットグループレベルの規模ともなれば、費用全体に占める家賃のような固定費の割合は限定的だ。ここから、テレワークの実施は、「費用圧縮」という効果よりも「労働生産性の向上」の面で、業績の拡大に貢献する性質があることがわかる。

確かに、在宅勤務体制に切り替わる前に契約したプロジェクトの納品といった要因で、当期の業績を押し上げたと考えることもできるだろう。しかし、総務省が公表した「平成28年通信利用動向調査」によれば、テレワークを導入していない企業の労働生産性よりも、導入している企業のそれは1.6倍高いというデータもある。

仮に第2、第3四半期と今後も堅調に業績が推移すれば、テレワークによってGMOインターネットの業績が向上したという見方が、より信憑性を帯びることとなるだろう。

それでは、テレワークを活用して労働生産性をより高めるためのカギは、どこにあるのだろうか。

対面コミュニケーションはやっぱり重要?

答えは対面コミュニケーションにある。昨年5月末に総務省が公表した「テレワークの最新動向と総務省の政策展開」によれば、当時テレワークを導入していない企業の障壁として「社内コミュニケーション不足」の懸念や、「顧客対応に支障が出る」というものが挙げられた。

これらの障壁は、対面コミュニケーションを重視する企業の姿勢が表れたものだと考えられる。しかし、このような「対面重視」の姿勢は、経営戦略上「時代遅れである」と斬って捨てられる感覚ともいえない。

ハーバード大学のダニエル・ウェグナー氏が提唱する「トランザクティブ・メモリー・システム」という概念によれば、組織のパフォーマンス向上は各従業員にあらゆる情報を共有することでもたらされるわけではない。むしろ、「どの従業員がどのような情報を有しているか」を知っているというメタ認知の状態こそが、組織のパフォーマンス向上に資するとする。

確かに、各個人が会社全体の情報や事業遂行に必要なスキルをつけようとしても、会社組織や事業分野が拡大するにつれて、求められる情報収集の労力が指数関数的に増加し、破綻するだろう。むしろ、幅広い部署に点在する従業員のスキルや情報を、いかに吸い上げられる組織の仕組みをつくるかのほうが、各従業員が器用貧乏に陥ることがなく、効率性が高い。

次ページモデルケースになりそうな有名企業の事例
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事