聖マリアンナ病院、今も終わりが見えない現実 コロナと闘う医療現場「あと1年くらいは続く」

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夕方、救命救急センターの重症患者看護専門の看護師、津田泰伸さんと小原秀樹さんがスタッフエリアに座っていた。この日も2人は、コロナ患者の対応にずっと追われていた。

「家に帰ってからも、コロナ関連のニュースでやっていると見てしまいますし、(気を)抜く場所がない、離れられないという感じ」と看護部副師長の小原さんは語る。

部下の多くは、パンデミックの最前線で働くという「新常態」に適応しなければならなかった。ある女性看護師は夜に帰宅し、家族に夕食を作る。しかし、子供たちが感染するリスクを避けるため、食べる時は別々だ。

津田さんには生まれたばかりの子供がいる。帰宅して玄関で子供の顔を見ると、安らぎとともに、抱き上げたいという衝動がこみ上げる。

「でも、抱っこしてあげたいけど、(感染が心配だから)そうしてあげられないな、と思ってしまう」と津田さん。

津田さんは、帰宅するとすぐ新しいマスクに取り替える。家でもマスクをしているため「子供は、私の顔を全然知らないかもしれない」と話す。

あと1年は続く

多くの国が封鎖措置を終わらせようと模索する中、聖マリアンナ病院の医療スタッフは、世界中のICUで働く人々と同じく、終わりが見えない現実に向き合おうとしている。企業は経済活動の再開を切望し、市民の多くも元の生活に戻ることを望んでいるが、それによって感染者がどれほど増える危険があるのか、最前線の医療従事者にも分からない。

「もうすでに戦いが3カ月以上にわたり、そして外出制限などもあり、相当なストレスを感じている医療従事者も多くいると思います」と藤谷センター長は病棟の廊下で語った。「その人たちのストレスをいかに軽減させながら戦っていくか、というのが今後の課題です」

津田さんは、自分のチームに防護服と呼吸器が必要な「赤ゾーン」担当の順番が回ってくる前からスタッフたちに注意を促しておく。心の準備を万全にするためだ。シフトの前日は、安全手順を復習したり、防護服で作業したときの暑さと疲労を想像し、不安の中で時間を過ごすことになる。

「自分が(疲れて)弱っているというのは、たぶん皆が言いづらいし、私もかなり言いにくいですよ」。津田さんの話をさえぎるかのように、彼の電話が鳴った。

看護師としてのシフトが終わっても、津田さんにはまだまだ仕事が残っている。同僚とともに、看護スタッフの新たな安全マニュアルを作り始めた。津田さんが病院を出るのは午後11時近くになりそうだ。

こうした生活は「あと1、2カ月とは思っていない。1年くらいとか続くだろうなとみています」と津田さんは言う。

夜が更け、人影が減ったセンター内に静けさが広がる。聞こえてくるのは、ICUの患者たちにつながれた無数のモニターが発するホワイトノイズだけだった。

(斎藤真理、編集:北松克朗、久保信博)

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