聖マリアンナ病院、今も終わりが見えない現実 コロナと闘う医療現場「あと1年くらいは続く」

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疫病を防ぐとされる日本神話の妖怪「アマビエ」のイラストが貼られた院内では、日夜を問わず、新たな感染症と戦う緊張とあわただしさが交錯していた。

センター内の廊下と病室は緑、黄色、赤に色分けされている。人の流れと感染リスクをコントロールするためだ。

一般のマスクで立ち入り可能な「緑ゾーン」、検査結果が出ていない患者の病室などがある「黄色ゾーン」、重症患者を収容し、宇宙飛行士のような防護服と電動ファンがついた特別の呼吸器を装着する必要がある「赤ゾーン」。医療スタッフはそれぞれのゾーン担当を交代しながら勤務にあたる。

だが、異常事態に慣れた医療スタッフばかりの同センターでも、当初、新型コロナウイルスの患者を積極的に受け入れようと説得するのは容易なことではなかった。

「救命センターで全部やるぞって言ったら、看護師も医者も、なぜウチだけがやらなければいけないのか、と言い出した」と、同病院の平泰彦・特任教授(救急医学)は話す。同氏は常に「他に行き場のないコロナウイルス患者を引き取る義務がある」と念を押していたという。

このコロナウイルスの特別な危険性を考えれば、スタッフが及び腰だったのは無理もなかったと平教授は言う。

「(コロナ)にかかる確率は高い。だけど医者になった以上、仕方がない」。そして、スタッフにはこう付け加えた。「自分たちが逃げだしたら、一体誰がやるんだ」

家族からの手紙

同病院では毎朝8時、夜勤明けの医師が1人ずつ、取りまとめ役の医師のもとにやって来て、数字や略語を読み上げる。ICUに入院する患者11人の容態についての報告だ。使い込んだPHSを片手に、手狭な廊下を歩いてきた藤谷茂樹・救命救急センター長が報告の場に顔を出した。

「今朝も1人の患者が亡くなった」と藤谷センター長は記者に告げ、ホワイトボードに近づいた。ボードにはマスキングテープがマス目のように貼られ、左側の枠には重症者(そのほとんどが50代、60代)の名前、その横にはここ数日の治療経過が詳しく書き込まれている。

4月5日、6日、8日、12日に患者が入院したことを示す記録、入院前あるいは入院後すぐに気管挿管を行った記録、「アビガン」の試験的投与の記録、人工心肺装置を装脱着した記録などが書かれていた。

その朝に死亡した男性の名前はすでに除かれ、ICUには合わせて3つの空きベッドができたが、藤谷さんは、夕方までに埋まってしまうだろうと語った。

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