一気に重症化「子どものコロナ」語られない怖さ 肺炎だけが症状と思い込むと見過ごす可能性
その後、医師らはステロイドの投与を開始した。抗炎症作用と免疫抑制作用が見込めるからだ。すると、ようやく効果が出始めた。数時間後には、ジャックさんに必要な血圧の薬の量は減っていった。
医師らにステロイドが効いたという確信はない。しかし、カーニー医師によると、それ以来、ジャックさんと同様の症状を抱える子どもたちに対しては、より早い段階でステロイドを投与しており、好ましい結果が出ているという。
退院しても心臓の経過観察は続く
しかしジャックさんの容体は、通常の病室に移動してからもまだ深刻な状態が続いていた。心拍数は30台と、本来あるべき水準の約半分でしかなかった。医師らによると、心拍数の低さはステロイドに起因する可能性があったが、確証はなかった。そのため、心臓の動きを常時モニタリングできる病棟にジャックさんを移すことにした。
ジャックさんが自宅に戻ったのは5月7日、入院から10日後のことだった。ジャックさんは引きずるような足取りでアパートのまわりを歩くと、ピノキオをまねて、こう言った。「僕は人間になったんだ! 糸になんか、つながれてない!」
今後も心臓の経過を観察するための診察に加え、しばらくはステロイドと抗凝血剤の投与も必要になる。心臓に炎症が残るかもしれないが、これは自然治癒するものと医師は予測する。ジャックさんと家族は研究の一環として遺伝子検査を受けた。小児多臓器系炎症性症候群の診断と治療方法を探るため、ジャックさんら、この病気から回復した患者の経過観察は今後も続けられることになる。
ジャックさんはダース・ベイダーの城が置かれた机の近くでポーズをとりながら、一時は俳優になろうと思ったこともある、と話してくれた。誘拐された孤児の役で、テレビドラマ『ゴッサム』にエキストラ出演したこともあるそうだ。しかし今回コロナに感染する前に、医学を勉強しようと考えるようになっていたという。「心臓にすごく興味があったんです」。そう語るジャックさんの心臓に対する興味は、病気になって一段と高まった。
「せっかく人生を取り戻せたんだから、この人生でもっといろんなことをやってみたい」。ジャックさんはそう言うと、キャプテン・アメリカの盾でファイティングポーズを決めた。
(執筆:Pam Belluck記者)
(C) 2020 The New York Times News Services
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