一気に重症化「子どものコロナ」語られない怖さ 肺炎だけが症状と思い込むと見過ごす可能性
5月中旬、退院を祝う風船が飾り付けられた自宅で、青いバンダナをマスク代わりにしたジャックさんと、ローリング・ストーンズの「舌出しロゴ」の付いたマスクを着けたジャックさんの母親が一家の経験を振り返った。映画業界でトラックの運転手をしていたものの、最近レイオフ(一時解雇)された父親が声をつまらせ、ジャックさんが駆け寄って抱きしめる場面もあった。
ジャックさんに39度の高熱と喉の痛みが出るようになったのは、手の発疹と腹痛があった次の週、最後に学校に足を踏み入れてから約1カ月後のことだった。心配したジャックさんの母親は、かかりつけの小児科医からオンラインで診療を受けた。
小児科医は、細菌感染の可能性があるとみて抗生物質の投与を始めた。数日たっても症状は改善せず、その後、ほかの症状が急速に現れるようになった。首の腫れ、吐き気、乾いた咳、金属のような味がする味覚障害だ。
痛みが稲妻のように体内を駆けめぐった
4月25日土曜日、ジャックさんの熱は40.3度まで急上昇した。胸は締め付けられるようで、深呼吸すると「胸の奥が痛かった」という。
その日の朝、カメリア・ガニア医師はパジャマを着たままジャックさんの家族とビデオ通話を行い、ジャックさんがほとんど口を開けられなくなっていることに気がついた。ガニア医師はステロイドを処方し、救急診療所に行くよう勧めた。診療所でジャックさんは新型コロナの感染検査を受けた。しかし結果が出るまで2日待たなければならなかった。
月曜日までには、痛みが「稲妻のように体内を駆けめぐるようになっていた」とジャックさんは言う。バラ色の発疹も両足に広がっていた。
家庭用モニターを使用していた医師は、ジャックさんの血圧が著しく低下していることに気づいた。父親はジャックさんを持ち上げて車に乗せ、病院に駆け込んだ。ニューヨーク・プレスビテリアン病院ワイル・コーネル医療センターの医師はジャックさんに点滴を行い、症状の診断を試みたが、新型コロナ感染症に見られる明らかな呼吸困難はなかった。そして、ジャックさんが土曜日に受けた感染検査の結果も判明した。陰性だった。
両親によると、医師らは単核球症のような症状が出ている可能性があるとみて、退院の準備を進めていたという。血圧が再び低下した場合は再度入院させる条件でなら、自宅で安全に様子を見ることは可能、という判断だったという。