苦戦するファミマ、「ブランド統合」の光と影 統合後の「歪み」をどこまで解消できるか

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この新施策は、元CKSオーナーにも一定程度受け入れられているようだ。「経営から手を引くことを検討していたが、採算改善が見込めるようになり、続けることにした」(現役ファミマオーナーのBさん)。

だが、複数店奨励金以外の歪み、例えば形式上の加盟年数問題や月次引出金の厳しい運用問題は残ったままだ。多くのオーナーは疲弊し切っている。

CKSからファミマに転換したオーナーは、転換時に5年契約を結んだため、2021年後半から2023年にかけて契約更新時期を迎える。ファミマの経営内容に詳しい業界関係者は、「契約更新までにファミマを脱退するオーナーが続出する」とみる。契約更新を決めたBさんも、「苦境に耐え切れず力尽きたオーナーも多い。そうなる前に何かできなかったのか」と、対応の遅さを悔しがる。

ローソンで店舗数で抜かれる?

ファミマ本体の経営も楽観できる状況ではない。2020年2月期業績は、不採算店縮小などの効果で事業利益645億円(前期比25.2%増)と増益で着地した。2021年2月期については「既存店の強化に軸足を置く。店舗の高品質化を最優先に実行する」(澤田社長)と、既存店の底上げに力を注ぐ。

ファミマは総菜のプライベートブランド「お母さん食堂」に力を入れる。ただ、ブランド力はまだ弱く、売り上げのけん引役には育っていない(記者撮影)

しかし、前出の業界関係者はファミマについて「魅力的な商品がなく、既存店売上高が飛び抜けて落ち込んでいる。オーナーの経営意欲も衰えている」と手厳しい。「今後数年内にローソンに店舗数で抜かれて業界3位に転落するのでは」とみる関係者もいる。

新型コロナ終息後は消費者の購買行動が変わる可能性があり、コンビニ業界もこれまでの規模拡大路線からの転換を迫られるだろう。ファミマはCKSとの大型統合を成し遂げたが、制度の歪みを解消し切れていない状況下で、難しい舵取りを迫られる今後の変革期を乗り越えられるのか。正念場を迎えている。

スペシャルリポート「苦戦するファミリーマート、『ブランド統合』の光と影」は週刊東洋経済5月23日号に掲載

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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