政治家が息子の名前を「一郎」にしたがる理由 「血縁による既得権益」をぶっ壊す唯一の方法

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日本とアメリカでは、そのへんの事情がぜんぜん違います。

アメリカでは、政治家のもとで政策をつくる人、つまり日本における官僚にあたる人は、選挙のたびに入れ替わる存在なんですね。

日本における霞が関の代わりに、さまざまな分野の「シンクタンク」が存在していて、ブレーンとして政策づくりに有力なアドバイスを行っています。

僕は、そういうアメリカのシンクタンクみたいな民間組織を、日本でもたくさんつくったほうがいいと考えていてですね、そうやって政治に対する参入ルートを増やすことで、政治家や官僚になる以外のやり方でも政策立案に影響力を与えられるようになるんです。

「若い人の政治参入」が既得権益を壊す

昔から政治家になる人の名前って、「一郎」がやたら多いじゃないですか。あれ、なんでだかわかります?

簡単な話です。「○○の息子」と、地元の有権者に名前をアピールできるから選挙で通る、というだけの理由なんです。

『2020年6月30日にまたここで会おう 瀧本哲史伝説の東大講義』(星海社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

政治家に二代目、三代目がやたら多いのは、この国の政治が血縁によって既得権益化しているからです。だからこそ、若い人が政治に参入できる新しいルートや仕組みを、できるだけ増やしたほうがいいんですよ。

そうすることで、政策にも多様性と競争が生まれます。また、日本各地にそういう政策を提言できる組織が増えていけば、地域ごとのニーズに応じた政策が実現できるようにもなっていくはずです。

社会保障の問題も、今は中央政府がすべて決めているので、地域によって異なるニーズにぜんぜん対応できていませんよね。

携帯電話の契約プランには、「バリューパック」とか「ダブル定額」といった個人の使い方に応じてお得になるプランがありますけれど、社会保障もそんなふうに選べるようになればいいと思うんです。

「何歳から医療費を1割にしてもらいたければ、40歳からの社会保険料がこれだけ高くなりますが、どうしますか?」といったように、個々人に合わせたプランを設定すればいいじゃないですか。

そのためには中央政府がぜんぶ一律に決めるんじゃなくて、地方自治体ベースの小さなコミュニティに分けて、そこで個別に意思決定をする仕組みを構築したほうがいい。

そうなれば地域ごとの特色ができて、「掛け金が少なくていいからボクは関西に住もう」とか「保障が手厚いから私は東京に住もう」といった、選択肢が生まれてきます。

いま、有権者が政治家を選ぶ手法は投票しかありませんが、「気に入らない政治家のいる地域からは出て行く」というのも有効な生き方でしょう。

残念ながら、日本人の多くは慣れ親しんだ地域に住むのが好きなので、なかなか移住に対するハードルは高いのですが、本来であれば、ダメな政治が行われている場所からは、逃げてしまうのがいちばんいいんですよ。

瀧本 哲史 エンジェル投資家

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たきもと てつふみ

京都大学客員准教授、エンジェル投資家。東京大学法学部を卒業後、東京大学大学院法学政治学研究科助手を経て、マッキンゼーに入社。3年で独立し、日本交通の経営再建などを手がける。その後、エンジェル投資家として活動しながら、京都大学では「交渉論」「意思決定論」「起業論」の授業を担当し人気講義に。「ディベート甲子園」を主催する全国教室ディベート連盟事務局。著著に『僕は君たちに武器を配りたい』『武器としての決断思考』『武器としての交渉思考』がある。

【2019年8月16日18時00分編集部追記】2019年8月10日、瀧本哲史さんは逝去されました。ご逝去の報に接し、心から哀悼の意を捧げます。

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