コロナが晒した「ダメな自治体」「できる自治体」 支援策ぶっちぎり「文京区」のスピード感

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面白いことに文京区では区よりもさらに早く地域の飲食店が集まっての民間の宅配サービスを立ち上げている。東京都の小池知事が週末自粛を呼びかけたのは3月25日だが、その翌日にサービス実施を決定し、最初の週末である28日、29日には実施にこぎつけていた「谷根千宅配便」である。

谷根千宅急便が配達をしているテイクアウトの1つ(写真:谷根千宅急便提供)

「失敗が許される時期でもあり、待っているだけではなく、とにかくいろいろ新しいこと試行錯誤、やってみようと決断した」と代表の宮崎晃吉氏は話す。

急ごしらえのサービスのため、電話、チラシとローテクではあるが、それが逆に高齢者の多いこの地域では人との接点として喜ばれている。地域の飲食店同士の連携、認知度向上は今後、役に立つはずとも。文京区は行政、地域ともにピンチに際してすばやく動けるまちだったというわけである。

23区内で「オンライン教育格差」

その文京区と引き比べてウチはどうだと住んでいる自治体の動きに不満を感じる人もいよう。今回の件では国、都道府県より身近にある基礎自治体の役割の大きさを実感した人も多いはずだが、今後はさらにその差が広がる。

たとえば子育てマーケターの森田亜矢子氏が保護者のつながり、SNSを通じて得た独自の草の根口コミ情報によれば、23区の小学校のオンライン対応では大半をオンラインで対応できるようになっている豊島区、文京区、千代田区、渋谷区などのフロントランナーとそれ以外では驚くほどの違いが生まれてしまっているという。

5月に入り、補正予算その他の調整が終わったことから、多くの自治体がその自治体ならではの施策を打ち出し始めている。そこで今ある差に気づき、埋めようとする自治体、気づかないままに従来のやり方でいこうとする自治体は露わになるはず。住民としてはその動向、方向をよく見ておきたいところである。

中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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