あのSpotifyが音楽の「英才教育」に乗り出した サブスクのネイティブ世代が生まれる時代

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そこで、数年間のユーザー調査からサービスを開発し、2019年10月にアイルランドで提供を開始した。今後もユーザーの声を基に改善を進める方針のため、まだ「ベータ版」(お試し)の位置づけとしている。

「遊び」「物語」「学ぶ」など、利用シーン別のプレイリストで楽曲をおすすめしてくれる(写真:Spotify)

幼少期からサービスを体験してもらえば、将来の音楽ファン、スポティファイユーザーとなる可能性は高まる。近年、拡充に尽力してきたポッドキャストなどの音声コンテンツにも、早くから親しんでもらうことで、一段と浸透させる狙いがありそうだ。

「最も若いファンを対象とするアプリの開発によって、(中略)若いリスナーは音楽や物語に対する愛情を育み始めることができる」(チーフプレミアムビジネスオフィサーのアレックス・ノーストロム氏)。

有料会員が世界で1憶3000万の顧客基盤

スポティファイは現在、世界で2億8600万超の会員を抱え、有料会員は1億3000万超を誇る。国際レコード産業連盟のレポートによれば、世界の音楽市場は5年連続で成長を続けており、その牽引役がスポティファイを筆頭とするストリーミングサービスだ。CDやレコードの減少をカバーする形で、シェアは全体の56%(2019年)を占めており、音楽市場最大の収益源となっている。

子ども向けアプリの投入は、数年後、長期を見据えた戦略の1つだろう。幼いときから、ストリーミングやサブスクリプションになじんだ”ネイティブ世代”が広がれば、世界の音楽市場は厚みを増すことになる。いまだCD販売が強い日本市場においても、子どもの層を取り込み、若い音楽ファンの開拓に結び付けることができるかが、焦点となりそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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