マスク生産世界最多「中国BYD」返金騒動の真因 カリフォルニア州では契約通りに納品されず

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アメリカ食品医薬品局(FDA)は当初、感染症対策におけるKN95マスクの有用性を認めていなかったが、アメリカ疾病対策センター(CDC)が、N95マスクが圧倒的に不足している現状も考慮し、「KN95マスクはN95マスクの代替品になる」との見解を表明した。

これを受け、FDAは4月3日に従来の方針を変更し、中国で承認された「KN95 マスク」が「N95」と同等の効果を持つとして、医療現場での使用を認めた。そこから多くの中国企業がKN95 マスクをアメリカに輸出するようになった。

ところがFDAは5月7日までに再び方針を変更。「アメリカの検査で、基準を満たしていないマスクが大量に見つかった」との理由で、アメリカに医療用マスクを輸出する中国企業80社のうち8割の輸出許可を取り消した。引き続き輸出を許可されたのは14社で、中国メディアによるとBYDはその中に含まれている。

米国基準の認証取れなければキャンセル

つまり、BYDのKN95マスクはFDAの検査はクリアしており、中国製マスクの輸出取消とBYDのカリフォルニア州への納品遅延は関係なさそうだ。

ではトラブルの真因はどこにあるのか。原因の一端が、両者の契約書で明らかになった。BYDはカリフォルニア州から、納品するKN95(N95)マスクに関してNIOSHの認証を5月8日までに取得することを求められており、認証が取れなかった場合は、先に受け取った代金を返還すると取り決めていた。

BYDのKN95マスクは5月8日時点で、NIOSH認証を取れていない。両者は5月上旬に協議し、契約内容を「カルフォルニア州が先に支払った4.95億ドル(約531億円)の半分を返金」「認証を5月31日までに取得し、納品日を5月22日までに確定する」と修正した。5月末までに認証が降りなければ注文はキャンセルされ、全額返金となる。

カリフォルニア州はBYDからKN95マスクとは別にサージカルマスク1億枚を購入しているが、こちらはNIOSHの認証は必要がなく、同州によると数千万枚をすでに受け取り済みとのことだ。

つまり、FDAは「KN95マスクをN95マスクの代替とみなす」方針であるのに対し、カルフォルニア州がより厳しいNIOSH認証という条件をBYDに求め、その審査に合格できていないことが、納品遅れにつながっているようだが、認証が遅れている理由や、商品が出荷されたかについて、カリフォルニア州は説明していない。

BYDは11日、北京メディアの新京報に「カリフォルニア州との取引は納品が延期になっただけでキャンセルではない。当社はソフトバンクグループともマスク生産で提携し、アメリカの他の州からも注文を受けている。今は残業してマスクを作っており、カリフォルニア州の件は事業への影響は大きくない」とコメントしている。

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