なぜ北陸新幹線は全席コンセント付きなのか

「W7系」公開で明らかになった数々の"深イイ話"

東北新幹線のように時速300キロメートルを超える高速運転の場合、トンネル突入時に出口で生じる騒音(トンネル微気圧波)が生じる。これを軽減するために先頭形状を細長く、複雑にする必要がある。一方で、北陸新幹線の最高速度は時速260キロメートル。速度が遅い分、騒音も少なく、先頭部の長さは9メートルで済んだ。

だとすれば、現在、長野新幹線を最高時速260キロメートルで走るE2系の先頭形状を踏襲すればよいのではないか、という疑問も生じる。これについては、「JRからE2系とは違うイメージにしてほしいという要望があった」と、川重車両カンパニー技術本部デザイン課の亀田芳高担当課長は言う。そこで、先頭の長さはE2系と同じ9メートルを維持しつつ、E2系よりも流線的なデザインを実現させるために苦労を重ねた。

E7/W7系の先頭デザインは、2005年に川重と日立が共同で製造した新幹線用高速試験車両「ファステック360S」の「ストリームライン」と呼ばれるデザインに似ているという声も一部にあるが、「ストリームラインは日立さんが開発したので、それをベースにしたということはない」(亀田課長)。

高速化の流れに一石

北陸新幹線では全席にコンセントが付いている(撮影:尾形文繁)

ビジネスマンにとってうれしい特徴としては、E7/W7系にはすべての座席に電源コンセントが付いていることだろう。

2011年3月にデビューしたE5系の普通車両には窓側と最前列、最後列しかコンセントがついていない。全座席コンセント装備のニーズはその当時からあったはずだが、超えられない技術的な壁があったのだろうか。

この疑問に対しては、「E5系の場合は高速運転を行うため、電気容量的に全座席コンセントの実現が難しかった」と、同設計課の大橋良和課長は言う。つまり、E7/W7系はE5系ほど高速運転をしないので、すべての座席にコンセントを付けるだけの電気容量の余裕があったというわけだ。ここでも、高速運転の代わりに別の満足が得られている。

世界を見渡せば、鉄道の高速化競争は激しさを増すばかりだ。だが、時速300キロ運転ができない制約を逆手にとって快適さや美しさを追求したE7/W7系は、高速化競争の流れに一石を投じるかもしれない。

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