アフターコロナで待つのはインフレかデフレか 「効率」より「安全」を優先する時代になるのか

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こうした脱グローバル化ないし国内回帰の動きが定着し、多くの財について「国内で賄えたほうがよい」という流れができてくると物作りの背後にあるコスト構造が大きく変わることになる。

過去10年余り、海外売上高比率も海外生産比率も上昇一辺倒であり、それが世界的なディスインフレ傾向に寄与してきたことを考慮すれば、現在は大きなパラダイムシフトの最中にあるとも考えられる。例えば東南アジアで作っていたものをドイツやアメリカや日本で作るようになれば当然、販売価格は上がるに決まっている。

国を挙げて「効率より安全」へ動く

そのようにして生産・費用に係る効率を損なってでも国内でさまざまな財を賄えたほうが国家のリスクマネジメント上適切なのだという判断が先に立てば、国家として法律や規制をその方向で再整備する可能性もある。「効率化を目指さないで安全を取る」という選択が各国で採用される世界では今より物価が上がるのではないのか。にわかには想像しづらい世界だが、リーマンショック後、金融機関に課された過剰と言えるまでの規制を思えば十分考えられる話だ。

仮にアフターコロナの世界におけるリスクとして、インフレが高進するとすれば、グローバリゼーションの巻き戻しとともに世界経済の非効率化が進み、「コスト高の世界」が到来するというコースだろうか。メインシナリオとはしないものの、さほど低い可能性ともいえない話に思われる。

※本記事は個人的見解であり、筆者の所属組織とは無関係です

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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