日本企業が今も根付くアマゾンの理念に学ぶ事 情報社会の次に来る「Society5.0」へ臨むために
具体的にはどのような社会なのでしょうか。内閣府はこう説明しています。
「これまでの情報社会(Society4.0)では知識や情報が共有されず、分野横断的な連携が不十分であるという問題がありました。人が行う能力に限界があるため、あふれる情報から必要な情報を見つけて分析する作業が負担だったり、年齢や障害などによる労働や行動範囲に制約があったりしました。また、少子高齢化や地方の過疎化などの課題に対しさまざまな制約があり、十分に対応することが困難でした。
Society5.0で実現する社会は、IoT(Internet of Things=モノのインターネット)ですべての人とモノがつながり、さまざまな知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服します。
また、人工知能(AI)により、必要な情報が必要なときに提供されるようになり、ロボットや自動走行車などの技術で、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題が克服されます。社会の変革(イノベーション)を通じて、これまでの閉塞感を打破し、希望の持てる社会、世代を超えて互いに尊重しあえる社会、1人ひとりが快適で活躍できる社会となります」
「人間中心主義」が理念に掲げられている
筆者がSociety5.0に注目するのは、とくに「人間中心主義」が理念として掲げられているからです。こうした説明からもうかがえる人間中心主義こそは、GAFA(アメリカのグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の次に来るもの、また2025年のポストデジタル資本主義の行方を示すものです。
現段階では、Society5.0の議論における人間中心主義は抽象的であり、また日本政府も大企業も、人間中心主義を具体的に描き切ることができず、実践もできていないように思われます。例えば「無人レジ」は、カスタマーエクスペリエンスの向上ではなく生産性向上を目的関数としており、「ツータッチ」で決済が終わる中国の無人レジ、あるいはタッチもいらず商品を手にしたら「ただ立ち去るだけ」でいいアマゾンの「アマゾン・ゴー」とは、カスタマーエクスペリエンスにおいて比べ物になりません。
日本は、政府も企業も生産性向上が目的関数になっているのです。GAFAやBATH(中国のバイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)は、もちろん収益を求めていますが、その手段としてのカスタマーエクスペリエンス、利便性向上に本気で取り組んでいます。現時点においてどちらが人間中心主義に近いかといえば、正直、後者ではないかと思わざるをえない状況です。
しかし、日本が再び国際社会をリードする存在になるうえで、人間中心主義は避けて通れません。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら