【鎌田浩毅氏・講演】一生モノの勉強法(前編)
●失われた10年をまったく学んでいない
『一生モノの勉強法』でいちばん言いたいことは何かというと、やはり「一生モノ」という部分です。私はたくさんの本を読みました。家にはビジネス書が100冊以上ありますが、確かに皆、素晴らしいことを言っています。しかし、「一生使えますか?」というと、一生ではないのですね。係長になるためには役に立つかもしれないけれど、一生の勉強法ではないと思うことが多々あったのです。最近、ベンジャミン・フランクリンの自伝を読みました。そこに書いてあったのは、驚いたことに今のライフハックでした。きちんと本を読むとか、人と仲良くするとか、技術を身に付けるなど。それを今週はできた、できなかったと○×で書き出して、できなかったところを次の週にやりなさいと。つまり200年以上昔に、もう現代に通用するようなことを彼は言っていたわけです。しかしその後の人たちは皆、学んでいないのですよ。200年の間ビジネス書がどれだけ出ましたか?
今も本屋さんには、山のようにビジネス書がありますね。だけど、ちゃんと学んでいない。それから、もっと言えば行動していない。私の本も、ついに6万部出ました。とにかく皆さん読んでくださるのです。だけど実行していない。結局、読んで「うん、なるほど」と言って、また次のビジネス書を読むのです。そういうことを繰り返しても、何も人生変わらないのですよ。私が言いたいのは、そこで一生を変えるようなことを学ばなければダメだということ。だから、ここでちょっと心を入れ替えて、自分の勉強法を変えてください。それが「一生モノ」にならなければダメなのです。
たとえばリーマンショックと言うけれど、1991年にはバブルが崩壊していて、失われた10年などと言うじゃないですか。冷静に考えてみると、リーマンショックの後も、たくさんのビジネス書を書いている方たちは、相変わらず同じ金融商品を売って、同じことを言っている。失われた10年をまったく学んでいないと思ったのです。その結果がこの選挙かもしれませんが。私たち科学者から見ると、2度目のバブルをやっているのに、やはり何の構造も変わっていないのですね。これは科学的に、もしくは学問の世界から言うと、やはりどこかおかしいと思うのです。知恵が蓄積されていないのですよ。つまりフランクリンが200年以上昔に書いたビジネス書、ライフハックの本が、少しも読まれていない。もしくは読んだのかもしれないけれど、身に付いていないのと一緒で、蓄積になっていないのです。
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