北の脅威を一気に高める新兵器「KN-09」

射程距離は180~200キロ。韓国はお手上げ状態

それに対し、KN-09の射程距離は、既存の240ミリMRLの約3倍の180~200キロメートルに及ぶとみられる。こうなると、韓国中部・忠清(チュンチョン)南道、鶏龍(ケリョン)市にある韓国軍の陸海空三軍統合本部(通称・鶏龍台)を直接攻撃することが可能だ。韓国中部・京畿(キョンギ)道、平沢(ピョンテク)市にある在韓米軍の2つの主要基地――米空軍の烏山(オサン)基地と米陸軍基地のキャンプ・ハンフリーズ――に対しても、一斉放射で直接の砲撃ができ、大ダメージを与えることができる。韓国中西部の大都市である大田(テジョン)までも射程範囲に収め、実に韓国領土の半分を砲撃する能力を持つとみられている。

射程距離が伸びている分、北朝鮮から相対的により近場となるソウルを砲撃する場合の命中精度も高まっている。つまり、北朝鮮が対南向けの威嚇発言として使ってきた、「密集都市ソウルを火の海にする」という言葉の現実味が一段と高まるわけだ。実際、ソウルでは家庭もオフィスビルもガス利用が多く、ガス管が張りめぐらさせているため、砲撃を浴びれば数珠つなぎに火災が広がる恐れがある。

KN-09で射程距離が伸びた分、同じソウルを狙うにしても、北緯38度線から離れた場所に発射場を設けることが可能になる。これは韓国軍や在韓米軍にしてみれば、発射場を反撃のターゲットにすることが難しくなることを意味する。

韓国国防省報道官は、「KN-09は戦時に韓国の戦略施設を攻撃し、米軍の増援を妨げるために開発されたもの」と述べた。

ロケットなのかミサイルなのか

韓国軍によると、KN-09は12発の一斉発射が可能で、その破壊力は、2010年11月の延坪島(ヨンピョンド)砲撃事件で使われた射程20キロメートル超の122ミリロケット砲の3倍に達するとみられている。また、1分間に数十発までの一斉発射が可能だという。

実は、KN-09がテスト発射されたのは今回が初めてではない。2013年5月17~19日に、今回と同様、北朝鮮の東海岸から4発を発射した。この時も日本海に向けて約150キロメートル飛んだとみられている。

北朝鮮はもともと対南向けの軍事戦略として、高価なMBT(主力戦車)では勝ち目がないとみて、より低価格で機動力がある自走ロケット砲の開発、製造、テスト発射に力を入れてきた。低価格な分、大量生産も可能になるからだ。

『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』の分析によると、KN-09は6輪あるいは8輪の車両から300ミリの「発射体」が放たれる。発射体と記したのは、『ジェーンズ』でもいまだに、このKN-09がロケット砲なのか、あるいはミサイルなのか断定できていないためだ。MRL、つまりマルチプル・ロケット・ランチャーと言えば「多連装ロケット発射機」の意味で、間違いなく発射体はロケット弾なのだが、KN-09はロシアの人工衛星測位システム「GLONASS」を利用して誘導されるミサイルとの情報もある(「ミサイル」と「ロケット」の違いは、基本的にミサイルはターゲットを定めた「誘導」、ロケットは「無誘導」ということだ)。

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