ソフトバンクG孫正義「中国で評価急落」の悲哀 「アリババ頼み」が露呈して過去の人扱いに

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これまでのソフトバンクグループの歩みは、孫正義62歳の強烈な個性と密接に結びついている。

「孫正義は個性が非常に強く、リスクを好む。ヤフーや日本テレコム、アリババへの投資は10年以上前の成功案件だが、それ以降は新たな潮流に追いつけず、いまだにアリババ投資の成功を再現したがっている」。孫正義の中国のビジネスパートナーは財新記者にそう語る。

投資コンサルティング会社、アトラス・キャピタル・アドバイザーズのバート・ハブシャは、「孫正義は大いに成功した連続起業家であり投資家だ。彼は先見の明を持ち、リスクをいとわない。ヤフーやアリババの件で賭けに出たことからも明らかだ」と話す。

「だが、孫正義は起業家の“ピッチ”(プレゼンテーション)にますますのめり込んでしまっている。身近な参謀の言葉に耳を傾け、自分が正しいと考える仮説を検証する必要がある」(バート・ハブシャ)。

「アリババ株を売ってはいけない」

一方、ソフトバンクグループは債務問題を抱えているが、新たな資金調達は容易ではない。

業界関係者は「孫正義は投資界の重鎮だが、クレジット市場のルールには詳しくない。やみくもにムーディーズ・ジャパンの格付けを取り下げたことで、債券市場での資金調達の道は基本的に閉ざされたとみている」と語る(訳注:S&Pの格付けは取り下げていない)。

別の業界関係者は、「もともとソフトバンクグループはアリババ株を売って急場をしのごうとしていたが、”アリババ株を売ってはいけない”ことに気づいたようだ」と語り、次のように続けた。

「5Gに投資する資金がなければ、グループの柱である通信事業は値打ちがなくなる。(その資金を確保するには、アリババ株を持っていたほうが調達上有利だから)アリババ株を保有していることこそが、ソフトバンクグループ株の価値なのだ」

孫正義の資金調達戦略は、いまやアリババ株の価値が頼りとなっている。

(財新記者:胡越、銭童)
※敬称略、『財新週刊』2020年5月4日発売号より抄訳

財新編集部

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Caixin

2009年設立の財新は中国の経済メディアとして週刊誌やオンライン媒体を展開している。“独立、客観、公正”という原則を掲げた調査報道を行い、報道統制が厳しい中国で、世界を震撼させるスクープを連発。データ景気指数などの情報サービスも手がける。2019年末に東洋経済新報社と提携した。(新型肺炎 中国現地リポート「疫病都市」はこちらで読めます

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