中国「サーモンからコロナ感染」疑惑の大波紋 専門家は魚から人への感染可能性には懐疑的

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サーモンへの「疑惑」を受けて魚売り場から刺身が撤去された北京市内のスーパー(6月15日)(写真:REUTERS/Tingshu Wang)
新型コロナ流行の「第二波」が懸念される北京で、サーモンが感染源と疑われている。そこに科学的な根拠はあるのか。「財新」取材班が徹底検証した。

新型コロナウイルスの感染者が相次いで見つかっている北京新発地卸売市場において、サーモンを切ったまな板の表面に新型コロナウイルス検査を行なったところ陽性だった。そのことが、サーモンから新型コロナに感染するのではないかという議論を呼んでいる。

複数のウイルス学者が財新の記者に説明したところによると、サーモンのまな板から検出された新型コロナの陽性サンプルは、サーモンそのものが新型コロナに感染して病原体を保有しうることを証明するものではなく、食品の表面やまな板がウイルスに汚染されていた可能性が高いという。現時点でサーモンそのものが新型コロナに感染し、感染源になりうるという科学的な証拠はなく、新型コロナに汚染された食物から人に伝染する可能性も極めて低いという。

6月13日に北京市の記者会見において、新型コロナ感染の確定診断を受けた4名の患者はすべて新発地市場と関連があったことが明らかにされた。新発地で働く職員に対して自発的にスクリーニング検査を行なったところ、45名から陽性反応が出た。もう1つの食品市場でも新発地の濃厚接触者1名から陽性反応が出たため、無症状の46名も“厳密な管理”のもとに置かれた。

スーパー、日本料理店がサーモン撤去

6月12日夜、新発地市場の張玉璽理事長は北京の地元紙「新京報」のインタビューで、関連機関がサンプリング調査をした際、輸入サーモンを切ったまな板から新型コロナが検出され、そのサーモンは(北京の)京深海鮮市場から仕入れられたものだったと述べた。北京市衛生健康委員会の広報担当者は13日の報告で、新発地市場内で発見された40件の陽性サンプルは“サーモンのまな板からのものもあれば、そうでないものもある”と発表した。6月13日、北京ではスーパーや日本料理店がサーモンを売り場から急いで撤去した。

本記事は「財新」の提供記事です

では、サーモンが新型コロナに感染して感染源になることはありうるのだろうか? 今年4月に、国連食糧農業機関、中国水産科学研究院など世界の16の機関が《アジア水産学》(Asian Fisheries Science)において共同で発表した論文の中で、「魚類、甲殻類、軟体類と両生類を含む水産物が新型コロナに感染しうることを示す証拠はなく、したがってこれらの生物が新型コロナの感染源となることはない」と述べられている。新型コロナはコロナウイルス科、ベータコロナウイルス属に属する。コロナウイルス科には5属のコロナウイルスがあり、いずれも鳥類と哺乳類のみに感染し、ベータ属のコロナウイルスは哺乳類のみにしか感染しない。

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