中国「サーモンからコロナ感染」疑惑の大波紋 専門家は魚から人への感染可能性には懐疑的

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では、サーモンのまな板から見つかった陽性サンプルの新型コロナはどこから来たのだろうか? 前述の論文と専門家が述べるように、ほかの食品と同様に水産物の表面が新型コロナに汚染されていた可能性があり、あるいは食品工場の労働者がウイルスに感染した後、水産物に接触してその表面にウイルスが付着した可能性もある。新型コロナは低温の環境下で長期間生存することができ、以前のある研究によるとマイナス60度の環境下で数年間も生存できるとされている。したがって、ウイルスがコールドチェーンを介して水産物市場に運ばれたことは考えうる。

その後の接触でウイルスに感染した人からの「ヒト‐ヒト感染」がおきた可能性はある。北京市疾病予防管理センターの龐星火副主任によると、北京市ではすでに新型コロナウイルス肺炎と確定診断された症例が連続して見つかっており、疫学調査によればこれらの症例はすべて新発地市場を訪れた経歴があり、確定診断された症例と関連のあるサンプルを集めて核酸検査(PCR検査など)を行なったところ陽性反応が出た。

龐星火氏は「これらの症例は、市場内で汚染された環境に接触した、あるいは感染者に接触したことにより感染したと推定され、さらに感染者が増える可能性も否定できない」 と述べた。

食品を通じた伝染は考えにくい

「市場の環境や、サーモンを切ったまな板で他にどのような動物を調理したのか、また他の肉と接触したかどうかなどを引き続き掘り下げて調査すべきだ」と陳大慶氏は提言している。また、輸送の過程で人が運搬したことにより、あるいは魚をさばく過程で汚染された可能性もあり、彼は新発地市場のすべての水産物を検査するべきだとしている。

李懿澤氏が示すところによると、肉類の表面が汚染されていた可能性を考慮しても、汚染された食品を通してウイルスが伝染する可能性は低い。食品の表面上でウイルスが増殖することはなく、水洗いや調理で簡単に不活性化するという。李懿澤氏は「食品の上で細菌は増殖できるがウイルスは増殖できず、ウイルスが感染して複製し拡散するには生きた細胞(宿主)が必要だ」と述べる。

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